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DX-Accelerator事業を始めるまでの裏話(想いや意志)

当社では、2022年にDX-Accelerator(以下「DXA」)という事業をテスト的にスタートしました(PoCってやつです)。2023年にPoCを無事に終えて、事業の収益性や有用性が見えたので晴れてサービスにラインナップしました。

https://webtan.impress.co.jp/e/2024/04/09/46744

出典:Web担当者Forum イベントレポート:GDOに学ぶデータ活用の舞台裏 マーケターに寄り添うエンジニアの育て方

先日、当社の主催するイベントでも紹介させていただいた事業なのですが、この機会にDXAという事業を少しでも皆様に知っていただこうとブログを書きました。内容はサービスの説明ではなく、事業にかける思いや、課題を一つ一つ乗り越えてきた振り返りのようなものです。楽しく読んでいただければ幸いです。

このブログ執筆時、売切御免状態と嬉しい悲鳴を上げるまでに成長しました。改めてこの場を借りて関係者の皆様には御礼申し上げます。

DXAとは

DXAとは、データ活用人材(主にSQLによるデータ処理やBIダッシュボードの構築)をクライアント企業に常駐型で提供しています。企業のDX推進を支援するデータ活用人材による支援事業です。サービス名もこの事業目的からつけました。

言わずもがなですが、企業のDX促進が一時的なバズワードから一般的な取り組みになりました。企業内に眠るあらゆるデータを事業活動に有効活用しようという流れは日々大きくなっていることを実感しています。

私たちUNCOVER TRUTHが提供するDXA事業は、マーケティング領域におけるデータ活用人材を提供しています。マーケティングDXと呼ばれるジャンルで、1st Party Dataを中心に、ユーザーの属性情報、購買情報、行動情報など、多様なデータをCDPなどのデータ基盤に集約、統合します。CDPに統合されたデータは、分析や可視化によりマーケティングの戦略策定や施策立案に活用してもらいます。さらにはデータ基盤と施策実行ツールを連携することにより、セグメントなど条件フラグのついたユーザーリストに対してメールや接客施策などの1to1マーケティングを実現する支援をしています。

マーケットニーズと当社のあゆみ

デジタル人材の不足は日本にずっと横たわる積年の課題だと考えています。経産省や総務省が毎年公開している白書でも、デジタルトランスフォーメーションにおける課題のトップに「人材不足」が挙げられています。人材不足を課題としてあげる企業は、米国や欧州などの先進各国では25-30%なのに対し、日本では50%を超え、ダントツの課題として取り上げられています。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112490.html

出典:総務省:第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済 第2節 企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題

当社は、この10年に渡りデータ分析コンサルティングを主要サービスのひとつとして提供してきました。企業の保有するデータを預かり、各クライアント企業の課題解決をデータの側面から支援する事業をしています。

当然ながら、市場環境としてデータ活用への需要が爆発的に高まる中で、供給が追いついていないデジタル人材による支援サービスは多くの企業に採用してもらいました。

社会へのデジタル実装が待ったなしに進む中、データ活用するデジタル人材の供給不足は社会課題となっています。当社の人材は社会課題に真正面から向き合うことができると信じています。質の高い人材を供給できている自負はあったので、社会の膨大な需要に対して、なんらかの一石を投じることができるのではないかと考えていました。

DXA事業開始までの壁

常日頃からクライアントに「人材を常駐で出せないか?」というお話をよくいただいていました。安定的な収益が見込めるというビジネスの側面がある一方で、常駐派遣のような事業はやりたくないと頑なにサービス化を見送ってきました。

見送ってきた理由ですが、漠然とした不安がありました。クライアント企業に社員を派遣していると、帰属意識も薄まり一定期間で人が入れ替わっていく心の通わない事業になってしまうのではないか?その不安が拭えませんでした。そんな事業を伸ばしてもお金以外に何が残るんだっけ?という青臭い不安です。

商売としては需要と供給の観点から、当社のデータ活用ノウハウがあれば事業収益を稼ぎ出せることは見えていました。自社のノウハウを教育カリキュラム化して育成した人材なら、クライアントに満足いただける自信があったからです。

乗り越えなければならない課題リスト

  1. 帰属意識の薄まらない仕組みの導入
  2. メンバーの教育機会と経験値の標準化
  3. メンバーのキャリアプラン

DXAの事業設計

前段で挙げた課題リストを解決する事業の設計が必要です。ただ教育して、ただ派遣して、気持ちが薄れたら去っていく、そんなメンバーの後ろ姿を見送るようなことはしたくありませんでした。

帰属意識の薄まらない仕組みの導入

毎週帰社日を設けることを制度設計に加えました。常駐先のクライアントには特定の曜日は出社せず週4日間の稼働を前提とします。帰社日にはDXA事業の組織強化のために以下のような取り組みをしています。

事業ビジョンの構築と共有による浸透

  • ワークショップ形式でDXA事業のMVV策定を数ヶ月かけて行いました。事業ミッションとして掲げている「データを日本の公用語にする。」という言葉は、メンバーのみんなでワークショップの末に決定しました。
  • その他、行動指針など自発的に自分たちのあるべき姿を議論し、日々の業務日報や1on1での面談などで指針に従った行動やアウトプット、自分の姿勢を振り返れる取り組みをしています。

取り組み事例の共有

  • メンバーはそれぞれのクライアントでの取り組みをシェアしています。TreasureDataやBigQueryを活用したTIPSや、Tableauでのダッシュボード設計やデータマートの構築方法など、経験の共有をしています。
  • その内容は全社に対しても発表の機会を持ち、常駐先の見えない仕事を可視化しています。また、ノウハウの共有にとどまらず、各メンバーのキャラクターも共有することを大切にしています。

メンバーの教育機会と経験値の標準化

教育プログラムの更新

  • 各クライアントでの取り組み内容を整理し、標準化できる作業プロセスを設計します。その膨大なノウハウは教育プログラムに組み込まれ、週次で研修内容は改善・強化されていきます。
  • 教育プログラムは新規採用されたメンバーへの研修プログラムに活用され、効果的な育成メソッドとしてDXA事業の強みの源泉となりました。今では未経験者であっても、数ヶ月の研修期間を経れば立派にクライアント社内での要求に応えられるまでになっています。
  • 常駐先クライアントの担当者から「未経験だったんですか?」と驚きの声を何度もいただいています。その声をいただくたびに、DXAの教育メソッドの完成度と進化のプロセスに確信の思いを抱くことができています。

経験値の標準化

担当クライアントを一定期間で交代する「ローテーション制度」を設けています。交代制という仕組みを取り入れることで、多様な業界と業務パターンやシステム環境を経験しながら、メンバーはデータスペシャリストを目指すことができます。

メンバーのキャリアプラン

スペシャリティの探求

現在、週一日の帰社日に行っているキャリア探求の研究開発プロジェクトがあります。アナリティクスエンジニアであるDXAメンバーの進化に向けて、2つの方向性を探索しています。

データエンジニア

システムエンジニア領域に近づくアプローチです。企業の持つあらゆるシステムからデータ基盤(CDPやDWH)へデータ連携をする際に、パイプラインやワークフローといったデータ転送を自動化する仕組みを開発することが主なスキルです。

データアナリスト

Webアナリスト領域に近づくアプローチです。DXAは購買データや行動データを扱いますが、特にWebやアプリといった顧客接点に着目します。データ取得の頻度が高いWebでの行動分析に重きを置いたスキル開発です。GA4など9割ほどの企業が導入する解析ツールのスペシャリストを目指します。

ジェネラリストへの道

  • DXAではチーム制を採用しており、リーダーが各チームを管理します。リーダーはクライアントの依頼内容を受け取り、作業要件に落とし込むことや、メンバーの作業進捗を管理し、クライアントとの定例会の中でフィードバックを受け取り業務改善を行います。
  • メンバーとしてスキルを磨き続ける道ではなく、メンバーのマネジメントや案件のマネジメント、業務の体系化や教育メソッドの改善などを行います。

独立支援というチャレンジ

  • これがDXA事業を始めることを決意した1番の要因です。メンバーの独立支援をこのDXAの事業領域としています。独立したDXAメンバーはUNCOVER TRUTH及びDXAの商標と販路を利用して自分で選んだ地域や業界でイキイキと自己実現してもらいたいという夢をこの事業に託しています。
  • 着想は若者の「IターンUターン」の意識調査結果です。働き方の自由度が問われる昨今では、地方で働きたい、地元に戻って生活をしたいというニーズが若者を中心に広がっています。

https://career-research.mynavi.jp/reserch/20220511_27878/

出典:マイナビ「2023年卒 大学生Uターン・地元就職に関する調査」 ※グラフは出典元の数値を元に当社が独自に作成。
  • 実はこの働き方のニーズと、デジタル人材の社会課題が合致します。地方ではデジタル人材が極めて少なく、DXが推進されず生産効率は上がらないまま、働き手が大都市圏にどんどん移動してしまう現実があります。
  • 当初はフランチャイズのような形態をぼやっと考えていました。もしもDXAの価値の源泉である教育システムを、日本中に独立して散らばった起業メンバーと共有できたら、地方のDXに貢献できるのではと考えるようになりました。
  • 現在は地方の有力テック企業に相談をしながら、DXAの起業支援ができるように販路開拓方法やサービスメニューを模索している段階です。

DXAのこれから

商売の基本ですが「三方よし」を実現できる事業として大切に育てていきたいと思っています。

売り手=DXAメンバー

  • 教育プログラムや組織づくり、サービス開発に至るまで、メンバーが主体的に関わりながら事業の価値を高めます。
  • 複数の経験を積めるローテーション制度や、質の高いナレッジの共有により、学びと実践の好サイクルを実現して成長を実感できる事業にします。

買い手=クライアント

  • デジタル人材の採用や育成が事業会社では本当に困難な時代です。急がれるデータ活用を実行するリソースを手に入れることができます。常駐型なので自社社員の一員として一緒に働くスペシャリストを補完することが出来ます。

世間=社会

  • デジタル人材の供給不足という社会課題に向き合います。大都市圏一極集中(ほとんど東京)のデジタル人材の偏りによる、地方のデジタル実装における停滞は日本全体の生産性が上がらない一つの要因でもあります。
  • 若者を中心とした働き方のマインドに変化が現れ始めています。地元就職という変化は、地方の人材不足をDXAの独立支援というシステムで解決したいと考えています。

将来、DXAの事業を通して、何百人という高度で前向きなデジタル人材を日本の隅々まで行き渡らせる未来を創ります。社会課題の解決に一石を投じることができればと、大きな志を胸に、これからもDXAのメンバーと共にチャレンジを続けたいと思います。DXAに興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらのサービス資料もご覧くださいませ。


この記事を書いた人

小畑 陽一
株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)

music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)

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