NewsCred主催「Think Content Tokyo Spring Session 2019」に登壇しました
世界最大規模のコンテンツマーケティング・プラットフォームであるNewsCredが主催する「Think Content」は、ブランド企業がコンテンツマーケティングについて考えるイベントとして、ニューヨークやロンドンといった世界の主要都市で毎年開催されています。日本ではビジュアルコミュニケーションのエキスパートであるアマナがホストを務め、「Think Content Tokyo Spring Session 2019」はそのスピンアウト版として、より具体的で詳細な情報をシェアすることを目的に開催されました。
今回のイベントは、コンテンツ活用の全体像の捉え方に始まり、コンテンツを正しく消費者に届けるための考え方、その先にあるコンテンツ改善とUI設計の重要性、そしてブランド企業が実際にどのようなコンテンツマーケティングを展開しているかという流れで、それぞれの領域のプロフェッショナルが参加者に向けて知見を発信しました。UNCOVER TRUTHは4つのセッションのうち3番目に登壇し「WebサイトのUX分析から導く、データドリブンなコンテンツ改善とは」をテーマに、データドリブンなコンテンツ改善の重要性をお伝えしました。
コンテンツマーケティングのゴールは「ビジネスを前進させるアクションの創出」
NewsCredによる第一セッションのテーマは「ブランドに『成果』をもたらすコンテンツ活用の方程式」です。メディアのようにコンテンツを発信するブランドの取り組みが2011年ごろから台頭したという話に続き、2015年に開設されたVan Winkle’sというサイトが紹介されました。Van Winkle’sの特徴は、マットレスメーカーのCasperが運営するメディアでありながら、コーポレートサイトから完全に独立し、睡眠に特化したメディアとして質の高いコンテンツを提供していたという点です。製品の紹介をすることなく「明らかにパブリッシャーとして活動している」と評価されていたVan Winkle’sですが、サイトはわずか1年でクローズされることになりました。その要因となった考え方について、登壇したNewsCred APAC Regional Manager のEst Fristchling氏は当時のVan Winkle’s編集長の次の言葉を紹介しました。
-ただ集客をすればいいのだろうか。それとも、その領域でのリーダーシップを確立する方が良いのだろうか
Fristchling氏は「ブランドによるコンテンツマーケティングの究極のゴールは、メディアとして成功を収めることではなく、ビジネスを前進させるアクションを作り出すことである」と話し、Van Winkle’sがその反省を得るための有名な事例の一つになったと説明しました。これを受けて、アマナ取締役の釜田俊介氏は投資対効果の計測に言及し、オーディエンスジャーニーに対応したテクノロジーを使うことの重要性や、広告主導とコンテンツ主導の施策におけるパフォーマンスの違いを説明しました。「卓越したコンテンツがあり、その効果を計測できる環境があり、最終的には最適化可能なチームを作る」ことがコンテンツマーケティングの目指すべき姿であると話し、セッションを締めくくりました。
マイクロモーメントの発生時に合わせてコンテンツを届ける
第一セッションの内容を受けて、第二セッションではSEOを手がけるSpeeeからデジタルコンサルティング事業本部の大宮拓氏が登壇し「コンテンツを効果的に届けるデータドリブンなサーチマーケティング」をテーマに話しました。
大宮氏は冒頭で、良質なコンテンツを正しく消費者に届けるために重要なこととして、以下の2つを紹介しました。
1.マイクロモーメントをつかむこと
2.マイクロモーメントの発生時に届く状態にすること
マイクロモーメント(以下、モーメント)とは、消費者が「何かをしたい」と思い、目の前のデバイスを使って検索したり購買したりという行動を起こす瞬間のことです。2006年の流行語大賞候補にもなった「ググる」、初期接触で検索につながりやすい「タグる(タグ付けをする)」、そして口語による音声検索へと、検索行動のトレンドが変化するにつれて検索クエリも多様化していることから、大宮氏は「マス広告を打ってもモーメントに対応する施策がないと流出してまう」と指摘。消費者がコンテンツを受容できるタイミング、つまりモーメントの発生時に合わせてコンテンツを届けることの重要性を強調し、その手段として不可欠なGoogleプラットフォームを正しく理解するための知見を共有しました。
ユーザー心理に寄り添ったコンテンツとUI設計が、意思決定の背中を押す
第一セッションと第二セッションの流れを受け、第三セッションは弊社CCOの小畑が登壇し「WebサイトのUX分析から導く、データドリブンなコンテンツ改善とは」をテーマにお話ししました。たどり着いたWebサイト上で消費者が求めるコンテンツをデータによって見極め、それをきちんと届けられるWebサイトを再設計することによって、ビジネスインパクトに結びついた成功事例を複数お伝えしました。
まずは、これまでにも何度かご紹介させていただいている富士フイルム様「Photo Book」サイトの改善事例です。
写真アルバムをWebから注文できるフリーミアムモデルの「Photo Book」は、同社の強みである高品質なアルバムの魅力を訴求することによって「せっかく思い出に残すのならこちら(有料版)にしませんか」と消費者に訴えかけるコンテンツ設計を狙いとしています。改善前のページを分析したところ「有料版(を選択するボタン)へのマウスオーバーが多いにもかかわらず、クリックされているのは無料版が多い」、つまり有料版を検討した人の多くが最終的には無料版を選んでいるということが分かりました。そこで、有料版を購入した人としなかった人のWebサイト内行動の違いをヒートマップツール「USERDIVE」で可視化しました。これによって「どこに惜しいポイントがあるのか?」を分析することが可能になり、その結果に基づいてコンテンツとUIを再設計したところ、選択画面でのマウスの滞留=ユーザーの「迷い」が解消されました。重要なのは「最初から無料版でいいと考えている人」と「有料版を検討していたのに無料版を選んだ人」を明確にし、後者の迷いを解消して有料版に導いたということです。この事例では「ユーザーの商品選択や購入判断を容易にするコンテンツとUI設計」がポイントになったと言えます。
続いて、約5年前からCXへの取り組みを強化されている三井住友カード様の事例をご紹介しました。この事例ではまず、プロパーカード入会サイトのCVRと訪問回数の相関性を調べたところ、初回訪問から3回目以内で入会する人が8割以上であることがわかりました。この結果によって、入会サイト訪問者へのアプローチは最初の1、2回目が勝負であることがわかりました。視点を変えると、入会サイト訪問者が求めているのは「初回訪問時に意思決定の背中を押してくれるコンテンツ」です。ここでも「USERDIVE」でユーザー行動を可視化し、「意思決定の背中を押しているコンテンツは何か」「ページのどの位置に置くことで、より確実にコンテンツがユーザーへリーチするか」を把握し、それに応じた情報設計に転換しました。この事例では「企業目線ではなく顧客目線のコンテンツとUI設計」がポイントになったと言えます。
最後は「中古車査定・車買取のガリバー」を運営するIDOM様の事例です。この事例では「車を売る」というアクションに関連するボタンに注目し、売る気満々なユーザーとまだ迷っているユーザーを「USERDIVE」で可視化しました。すでに売る気満々のユーザーに対しては、余計な訴求情報や離脱の原因になる不要なリンクを削除することによって、申込動線に一気に進んでもらうことを優先します。一方、まだ迷っているユーザーに対しては、迷いを解消して態度変容を促すようなコンテンツを作成し、それを読んでもらうためのUI設計で申込導線へと誘導しました。
三つの事例はいずれも、数%のCVR改善によって大きなビジネスインパクトを生み出しています。小畑は改めて、ユーザーが求めるコンテンツをデータによって見極め、それをきちんと届けられるUI設計の重要性を強調し、セッションを終えました。
最終セッションではサッポロビールの福吉敬氏が「情報分析でブランドの価値を最大化させるコンテンツマーケティング」と題し、同社の具体的な取り組みを紹介しました。今回の「Think Content Tokyo Spring Session 2019」は、4つのセッションを通して、コンテンツマーケティングに関する知見を広く具体的にお伝えする機会になったかと思います。
UNCOVER TRUTHでは、今後もこのようなセミナーを通して積極的に成功事例を発信し、Webビジネスの成長やそれに向けた組織上の課題を抱えている企業・ご担当者様を支援してまいります。