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アサヒビール様・カゴメ様・KDDI様にパネラーとして登壇いただき、UNCOVER TRUTH主催のセミナーを宣伝会議で開催しました。

企業による情報発信の手段はこの10年間で大きく変化し、従来のマスメディアやソーシャルメディアの活用による情報発信に加えて「自社で情報発信拠点を持ちたい」というニーズが高まっています。こうした中、近年特に注目されている情報発信手法の一つがオウンドメディアです。オウンドメディアを開設する企業の増加にともない、運営するうえでの課題も明確になってきています。

今回のセミナーは、弊社CAOの小川卓による講演と、実際にオウンドメディアで成果を出している企業をお迎えしたパネルディスカッションを通して、オウンドメディアで成果を出すために重要な考え方をお伝えお伝えました。このレポートではその内容をご紹介し、明日から使えるノウハウをお届けします。

オウンドメディアの成否は“今あるデータ”の活用で決まる

昨今、効果的な情報発信の手法としてオウンドメディアを開設する企業が増えています。一方、時間とお金をかけて運営するオウンドメディアが自社のビジネスにどのような効果をもたらしているかを、計測できていないという悩みも多く聞かれます。この「計測できていない」という課題の要因には、以下のような状況が挙げられます。

  • PVの増減など、点の情報だけを追っている
  • ユーザーアンケートなど、定性情報だけで成果を評価しようとしている
  • メディア上のコンテンツが、オフラインを含めた自社の最終CVに寄与しているかどうかわからない
  • ターゲットの態度変容や行動変化を、そもそも定義できていない

視点を変えると、オウンドメディアの成果を評価するための分析をするためには、Webログデータや購買データなど、ユーザーに関わるあらゆるデータを繋いでユーザーの動きを把握・可視化することが必要だと言えます(下図)。

そこでここからは、ユーザーの動きを把握・可視化して成果につなげるための具体的な手法をご紹介します。こうした取り組みを考える際、最初のアクションとしてツール導入の検討を開始する企業もありますが、以下のようなステップで、目的達成のために必要なツールは?という逆の順序で考えることが重要です。

成果の状態を定義し、ゴールまでのプロセスを描く

どのような施策を実施したいのか?その施策は、実施可能なものか?

施策の実行判断と評価をするために、どのような情報が必要か?

そのために必要なデータ基盤は何か?

データ基盤活用におけるステージ

まずは上記のステップのスタートラインに立つために、自社がどのステージにいるのかを確認するところから始めましょう。7つの項目それぞれについて、ステージ1から5の状態を以下の表に言語化していますので、自社がどこに当たるか、次のステップは何なのかをぜひチェックしてみてください。


自社のステージを確認したら「とりあえず運営しているだけ」の状態にならないよう、次の3つのステップを考えます。ここでのポイントも、ステップ3から逆算するように考えることです。

3、繋がったデータを元に分析(課題抽出/可視化)・施策実行を行う:何がしたいのか?何ができるのか?

2、データを繋ぐ(取得データをユーザー単位で連携させる):判断に必要なデータは?

1、データを整える(必要なイベントデータを取得する):どこで、どのように、どのタイミングでデータを取得するか?

この順序で考えることによって「データを取ったはいいけど、何に使うんだっけ?」となってしまうことを避けられます。

一人のユーザーとして追いかける基盤構築をする

自社のステージを確認し、3つのステップを逆算して考えることによって、スタート地点に立つことができました。ここからは複数チャネルのデータを統合し、オンラインからオフラインまでを一人のユーザーとして追いかける基盤構築を目指します。

ユーザーのデータは様々な場所に格納されていますが、実際に存在するのはそれぞれのデータが合わさった一人のユーザーの情報です。そのため、バラバラになっているデータをユーザー単位で紐づけて整備し、全ての行動を可視化する必要があります。しかし、いきなり複雑な仕組みを準備することは難しいうえに費用もかかります。現在の基盤+1でできるところから着手し、成功体験を作ってから徐々に範囲を広げていくことが、成功のポイントです。

ではここから、一人のユーザーとして追いかけるための具体的な手法を見ていきましょう。もちろん実際に一人一人のデータを見ていくのは現実的ではありませんので、ユーザーをクラスタリングすることから始めます。ここからは、先ほどの逆算の考え方を、より詳細に分解してご説明します。

1、ユーザー状態の最終ゴールを設定し、スタート状態(現状)とのギャップを把握する

例えばブランドサイトであれば「ファンを増やす」、ECサイトであれば「ロイヤルユーザーを増やす」のように、業界やサイトの特性によって目指すべきゴールを定義します。それに対してスタート時のユーザーの状態を「何かのきっかけで初めてサイトに流入する」「商品を購入したいユーザーが検索等でサイトを見つけて訪れる」など、言語化します。

2、行動や態度変容を想像し、間のプロセスを整理する

1で整理したゴールと現状の間で、ユーザーにどのような行動や態度の変化があるかを想像し、間のプロセスを定義します。例えばブランドサイトのオウンドメディアでは「何かのきっかけで初めてサイトに流入する」という状態の後に「記事を読み内容を理解する。他の記事も読んでみる」「サイト名や提供している会社を知り、時々訪れるようになる」「内容や理念に共感し、自分の意思で継続的に読みに来て情報源の一つとなる」という変容が想像され、ここから「愛読者としてサイトをサポートしたり、他の人に勧めたりというアクションを取り始める」=ファン化というゴールに到達します。

ここで注意するのは「トップページの後、一覧ページへ進んで…」と、ページ単位で考えないこと。追うのはあくまでもユーザーの“行動・態度”の変容です。

3、「行動イベント」を元にユーザーを分類・可視化する

以下のように、行動イベントをキーにユーザーをいくつかのグループに分け、改善優先順位や施策を検討します。

行動イベント例

  • ファンユーザーを定義して、ファン化を目的にマーケティングを行う
  • ロイヤルカスタマーの行動を可視化して、ナーチャリングするマーケティングを行う
  • オフラインCVの場合、ユーザーの触れた情報と紐づけて個別最適化を行う

4、各クラスタに対しての条件付けを行う(ユーザー単位の指標)

2、3で整理した各ステップにいるユーザー群(クラスタ)を定義します。例えば「サイト名や提供している会社を知り、時々訪れるようになる」クラスタは「訪問頻度指数が0.1以上、累計記事読了数が5以上」、「愛読者としてサイトをサポートしたり、他の人に勧めたりというアクションを取り始める」クラスタは「ソーシャルメディアでのシェアあるいはコメント記入。3カ月連続で5記事以上閲覧」などです。訪問間隔や訪問頻度も含めた正確なユーザー行動を捉えるために、以下のような図式化も効果的です(下図)。

5、クラスタを計測できる状態にする

ここで初めて、必要なツールの選定とデータ取得設計に着手します。計測したデータでクラスタを可視化し、どのユーザー群を増やすことができたのか?など、ターゲットにしている数字を追いかけます。サイト全体の訪問者数が一定だとしても内訳の変化を追いかけることで、次の施策につなげることができます。

6、滞留や遷移となる要因を分析し、施策につなげる

そして最後に、施策です。定義したクラスタの各ステップがどのような状況になっているかを計測・可視化することで、「『興味→認知』の遷移を80→30から80→50に引き上げたい」といったような、意味のあるKPIを設定することができます。このKPIに向けて施策を立てる際は、ユーザーステージ別の特徴と、それぞれ次のステップに必要なアクションを整理しておくと「どの人を、どのように、どのくらい増やすか」を考えやすくなります。

データ接続に必要な設計

KPIと施策が固まったら、実際のデータ接続の作業に進みます。ユーザーの行動を可視化するのに必要な指標には、以下のようなものがあります。

  • Client ID(Cookie)
  • 会員ID
  • タイムスタンプ
  • 初回訪問日
    GAやAAなどのアクセス解析ツールはあくまでも集計した後のデータを見るためのものですので、ここでタイムスタンプや初回訪問日を取っておくと、後から管理しやすくなります。

次に、ユーザー単位とページ単位で取得するべき情報を整理した設計書を作成します。ゴールから逆算しながら整理した情報をもとに、一人のユーザーについてどのような情報を取りたいか?記事ページではどのような情報を取りたいか?を整理するシートです。

これらの準備をすることによって、自社IDを活用したクロスデバイス分析や、チャネルが別の場合のクロストラッキング、定例情報の利用など、自社のゴールに応じた様々な施策を展開できるようになります。

まとめ

もちろん企業やサイトによってプロセスは異なりますが、最後に改めて、重要な3つの考え方をお伝えします。

1、ゴールおよび評価を整理する
2、ゴールまでのプロセスを設定し、それぞれのステップでユーザー行動を可視化する
3、現在できることから実行し、データ基盤の必要性と価値を腹落ちさせてから、範囲を広げていく

ぜひ、現在できること+1の繰り返しで、できることを徐々に広げてみてください。

成功の鍵は、豊富なデータが支える柔軟な方向転換

第二部は、以下の皆さまをお迎えしてパネルディスカッションを実施しました。

  • アサヒビール株式会社 経営企画本部 デジタル戦略部担当副部長 馬場崇暢氏
  • カゴメ株式会社 マーケティング本部 広告部 宣伝グループ主任 大喜多奈央氏
  • KDDI株式会社 コミュニケーション本部/宣伝部 ブランドプロモーショングループ グループリーダー 西原由哲氏

アサヒビール社では酒類の需要創造をKGIとする「Campanella」、カゴメ社ではファン顧客の育成を目指す「VEGEDAY」、KDDI社ではブランディング・事業への興味関心を目的とした「TIME&SPACE」というオウンドメディアをそれぞれ運営しています。

パネルディスカッションでは、各メディアの具体的なKPIやその設定方法、運用体制、分析・レポート手法について各社の説明があった後、登壇社から聴講する皆さまへ、オウンドメディアを運営するうえでのアドバイスを贈りました。「会社の体制が変わるたびに、アメーバのようにKPIを変えながら今に至っている。KPIを柔軟に変えるためには、情報をたくさん持っている必要がある」「コストに見合う流入の見込みがないまま、リッチなサイトを作ってしまった」など、各社のオウンドメディア成功の鍵と、そこに至るまでのリアルな課題を詳細にお話しいただきました。

UNCOVER TRUTHでは、今後もこのようなセミナーを通して積極的に事例やノウハウを発信し、Webビジネスの成長やそれに向けた組織上の課題を抱えている企業・ご担当者様を支援してまいります。

以上

UNCOVER TRUTHでは様々な業界の企業さまのWeb事業を成長させるお手伝いをさせていただいております。
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