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CDPの活用で顧客理解を深める。カスタマーデータの初期分析方法

CDPで統合された顧客データを活用し、顧客理解に向けた「顧客の状態把握」「顧客の可視化」を行う際の初期分析の手順をご説明します。
実際に顧客データの分析を担当されている方、CDP導入や活用のプロジェクトに携わっている方、マーケティング担当の方はぜひ一読ください。

顧客理解を深める初期分析の手順

CDPなどで統合されたデータを活用して、顧客理解を深めるための初期分析は、大きく4つのステップにわかれます。データは統合したけれど、結局何から手をつけていいか分からない場合はぜひ参考にしていただければと思います。

CDP統合データを活用した状態把握・可視化における初期分析のステップ
【CDP統合データを活用した状態把握・可視化における初期分析のステップ】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:87

1. 顧客とデータソース、各種ID保有率の確認

すべての顧客における各種データソースの紐づき率「各種ID保有率」(データと顧客がどの程度紐づいているのか? )を確認します。CDPでデータを統合しようとしても、すべてのデータが顧客に紐づくわけではありません。一つのデータしか紐づかない顧客、複数のデータが紐づく顧客、それぞれの顧客の状態を把握しましょう。

各種ID保有率データ表
【各種ID保有率データ表】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:88

「各種ID保有率データ例(上図)」のように、各種データソースごとのIDを識別できるようにIDの保有数と保有率を集計していきます。表の中の比率は全体の統合顧客における各割合を示しています。(ID同士の重複が含まれているため、足し上げると100%を超えます)

各種データソースのID保有率をみることで、すべての顧客のうち、各種データソースに紐づく顧客がどのくらい存在しているか把握します。 IDごとの重複率の確認用に「CDPにおけるID状況(下図)」のような図を描くことで、全体像を把握しやすくなります。

CDPにおける顧客ID状況
【CDPにおける顧客ID状況】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:88

2. 顧客属性を把握

性別・年齢や居住地域などの「顧客属性」を分析し、自社の顧客像を把握しておきましょう。 すでに顧客属性を把握されている場合は次に進んでいただいて大丈夫です。 とはいえ、CDPには新しく取得した顧客データが日々蓄積されていきます。例えば、キャンペーン施策などを実施したときにどのような顧客を獲得できたのか?顧客属性に変化がないかは随時確認するとよいでしょう。

属性データは、デモグラフィックデータ(性別・年齢・居住地域など)、配信希望メルマガのパーミッション(許可)など、顧客が会員登録したときに取得できるデータが中心となります。企業によっては趣味・嗜好性のデータも取得している場合などもあります。

顧客属性データ一覧
【顧客属性データ一覧】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:89

CDPのデータは、該当するデータが存在しない顧客もいるため、そのデータの値が「NULL(欠損値)」になることも少なくありません。そのため、NULLは除外して集計し、比率をメインに比較しましょう。とはいえ、比率にばかり目が行き、実際の顧客数は数人しかいない・・・ということもありますから、実数もグラフに記載することをおススメします。

性別毎の顧客数と売上げ集計グラフ
【性別毎の顧客数と売上げ集計グラフ】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:90

例として、上図に性別ごとの顧客数と売上を集計しグラフ化しました。
顧客数は女性が6割を占めている。一方で、売上は男性が6割を占めていることがわかります。

このように「各指標が、どのような顧客で構成されているか」を把握します。デモグラフィックデータ(性別・年齢など)は、上図の100%積み上げ横棒が分かりやすいです。アンケートデータ(複数回答が可能)は、重複回答も発生するため下図のような項目ごとに比率をグラフ化するとよいでしょう。

アンケート回答顧客属性データ例
【アンケート回答顧客属性データ例】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:90

他にも、「料理好き」や「スポーツ好き」などのCookieベースのオーディエンスカテゴリや、他社データと連携したアンケートデータなどもあるかもしれません。いずれにせよ、『人となり』がわかるデータをこの段階で把握しておいて、後に「この行動をしてくれる人たちはどんな人?」と思ったときに、属性データをクロス集計できるようにしておきたいですね。

3. 自社サービスのファネルごとの傾向把握

自社サービスを「ファネル区分」で分析し、区分ごとの顧客構成や売上構成の傾向を把握しましょう。

・ファネル区分の一般例
 ∟未購入客→初回購入客→2回目購入客→リピート購入客|休眠顧客
 ∟申し込み以前→仮申し込み→申し込み|離反顧客

・業界別ファネル区分の例
 化粧品・健康食品
 ∟体験・モニタ→通常購入→定期購入

 保険
 ∟資料請求→契約→追加契約

上記のように自社に合わせたファネル区分で顧客構成を把握してください。
下図ファネル区分イメージでは、 顧客を【潜在・見込→新規→リピート→ロイヤル|離反・休眠】とします。ファネル区分別に顧客数・売上構成を確認することで、自社サービスのステップや顧客区分がどう構成されているかが分かりやすくなり、分析後のCRMが実行しやすくなります。フェーズの数に制限はありませんが、はじめは管理しやすい数をおすすめします。

サービスのファネル区分イメージ図
【ファネル区分イメージ図】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:92

ここで、ファネル区分を考えるにあたって注意したいことがあります。

ファネル区分作成の際の注意点
1人の顧客に対して1つのファネル区分しか付与しないこと

「潜在・見込顧客」と「新規顧客」の両方が1人の顧客に付与される状態にしないこと。
もしくは、どちらの条件も満たされるようなフェーズ設定にしないようにしましょう。

ファネル区分作成の際の注意点
・ファネル区分ごとの線引きを明確に設定する=判別がつかない顧客をつくらないこと

ファネル区分で、アンケートやNPS(Net Promoter Score:企業の製品・サービスに対する推奨度)の値で判断する条件を設定した場合。そもそもアンケートやNPSに答えていない顧客は正確に判別できなくなってしまいます。アンケートやNPSを使って顧客のロイヤルティを測ることは悪くはないですが、ファネル区分を判別する条件の線引き自体は明確である必要があります。

自社サービスのファネルにおける顧客数と比率と売上
【自社サービスのファネルにおける顧客数と比率と売上】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:92

4. 行動データから行動の傾向を把握

各種行動データにおける行動量分布など「行動群」を分析します。
アクセスログやメルマガログ、購買データなどのトランザクションデータから行動量の分布を取り、期間回数などの傾向も把握しましょう。これらのデータに対して「顧客数」も集計していきます。売上指標などの成果指標があれば併せて集計し、売上構成も把握できると尚よいです。

トランザクションデータは「更新頻度が高く、顧客の出来事の詳細を記録したデータ」であり、日々大量のデータが更新されていきます。CDPで統合顧客のデータマートを作成する際、トランザクションデータは膨大なレコード数になっていることが多いため、考えなしに顧客に紐づけないようにしたいところです。

トランザクションデータを顧客に紐づけるには・・・
「XXという行動をしたか」
「XXを何回したか」
といったデータ項目でまとめて紐づける必要があります。

顧客マスターとアクセスログのトランザクションデータ
【顧客マスターとアクセスログのトランザクションデータ】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:93

上図には「顧客マスター(会員リスト)」のマスターデータと「アクセスログ」のトランザクションデータがあります。
CDPで統合顧客データマートを作成するにあたり、1顧客に1レコード(行)のみで構成しているため、トランザクションデータを集計します。

顧客ID「AAA」のみに着目すると、アクセスログは3レコード存在しており、「TOPページ」「特集TOPページ」「商品一覧(バッグ)」を閲覧しています。Webサイトでの行動を「Web訪問回数」(Webサイトに何回訪れたか)「特集TOPページ閲覧回数」(特集TOPページを何回閲覧したか)というデータ項目で集計しています。

このようにトランザクションデータを顧客ごとに集計していきます。この場合 「対象期間」 と「回数」の条件でデータ追加するのをおすすめします。
「Web訪問回数」は、全期間だけではなく、直近3ヵ月、半年、1年など、顧客に紐づけておくことで、例えば、直近Webサイトに来てくれているか?という「アクティブ性」を測る指標にもなります。

対象期間の集計

各種データソースごと、対象期間ごとの行動有無を集計し、下図のように集計&可視化します。

集計対象期間ごとのWebサイト訪問有無のデータ
【集計対象期間ごとのWebサイト訪問有無のデータ】
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:94

上図のグラフを見ると、統合顧客のうち60%がWebサイトへ訪れたことはありますが、直近3ヵ月ではWebサイトへ訪れたのは全顧客のうち10%であることがわかります。

CRM施策では顧客にコミュニケーションを取るときに「顧客のアクティブ性」を意識する必要があるため、このように顧客がどの頻度でWebサイトに訪れるのかを把握する必要があります。グラフでは「1週間、直近1ヵ月、直近3ヵ月、…、直近3年、全期間」という頻度で集計していますが、自社のサービス特性に合った頻度で集計するとよいでしょう。

回数の集計

各種データソースにおける特有な行動の回数ごとの分布をみます。
先ほど同様「アクセスログ」をデータ対象とし「Webサイトへの訪問回数」で集計してみましょう。

会員のWebサイト訪問回数と比率
出典 著者名:小畑 陽一 (著), 菊池 達也 (著), 仁藤 玄 (著) 書名:ユーザー起点マーケティング実践ガイド 出版社:マイナビ出版社 出版年:2021 該当ページ:95

「Webサイトの訪問回数」では多くの企業が1回訪問の比率が高い状態のため、リピートしてくれるかも重要な指標となります。訪問回数ごとの顧客分布を集計し、Webサイトへの再訪状況を把握しましょう。訪問回数ごとの顧客数の差を見ることで、2回目訪問のハードルの高さなど、行動量における閾値を把握できます。

ここでは「アクセスログ」を例にとりましたが「購買履歴」や「メルマガ開封・クリックログ」なども同様に「対象期間」「回数」に分けて、行動量の分布を見ていくとよいでしょう。また各種データソースも混ぜながら「対象期間」「回数」をクロス集計することで、施策につながる分析もできるようになります。

CDPで統合したデータをマーケティング活用してくためには、まずは統合されたデータの状況と顧客の全体像を把握していくことが重要です。


この記事を書いた人

小畑 陽一
株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)

music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)


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