マーケティングデータ基盤構築の4つの手順。3.サービスをつくる、4.コミュニケーションをつくる
この記事では、 マーケティングに活用するためのデータ基盤構築の 「4つの手順」の中で、データを分析し実際の施策を考える土台となる「サービスをつくる」と、施策のタイミングや内容や接点を顧客に最適化させるための「コミュニケーションをつくる」について書いています。
- マーケティング基盤構築の4つの手順
・データをあつめる(別記事)
・データをつくる(別記事)
・サービスをつくる(この記事)
・コミュニケーションをつくる(この記事)
目次
サービスをつくる
この記事におけるサービスをつくるとは、統合されたデータを活用するために分析し、実際の施策にいかすための事前準備を指しています。データアナリストが主に活躍する手順です。ここで顧客分類(クラスタリング)や意味づけ(フラグの付与)をしていきます。
顧客分類(クラスタリング)分析
これまでに「あつめて」「つくりあげてきた」顧客データを自社の事業に適した顧客分類のフレームワークに当てはめる作業です。自社の顧客にはどのようなロイヤルティ構造が存在しているのか?を明らかにすることが目的です。
日用品を扱うサービスであれば「購買頻度」などの積極的な利用傾向がスコアとして重視されるでしょうし、購入頻度や利用頻度の低い、耐久消費財や旅行商品などであればSNS公式ページやオウンドメディアへの「接触頻度」や「コンテンツ閲覧の深度」がスコアに反映されるかもしれません。
事業に応じて、顧客とのエンゲージメントを図る物差しは異なりますので、マーケターが顧客とブランドの関係性を理解し、データアナリストと共に顧客の行動特徴を分析していくことが必要です。ここで判断ミスを犯すと、顧客理解につながるどころか、顧客の好まないコミュニケーション施策を誘発してしまうため、慎重にデータを分析していくことが肝心です。
これまでに作り上げてきた、リッチな顧客データがあれば、年代性別などの属性や、RFM分析に代表される購買額や購買頻度だけではない顧客分類が構築できます。コンテンツの閲覧行動データや、起点がメールなのかSNSなのかなど、接触チャネルも分析に含まれます。ECサイトで買う商品カテゴリと、店舗で買う商品カテゴリの違いなども分析観点によっては重要なデータ項目になるでしょう。多様なデータから顧客分類を定義することで、その顧客分類ごとに最適な施策シナリオを用意できます。
ビジネス観点でも評価する
ビジネス観点での予測や評価も重要になります。各顧客クラスター内の潜在顧客数が判明することで、顧客クラスターごとのビジネス規模がわかります。
さらに、クラスターAからクラスターBへ1人移動すると年間売上が○万円向上するということもわかってきます。そうなれば、クラスターAからBへの育成を促すCRM施策を実施するときに、想定移動人数(CV数)と、クラスターAとBのRFMの差分を計算すれば、自ずと売上成果の予測額まで算出できるようになります。施策リストをビジネス面から評価することで、施策実行する優先順位も決定できます。
コミュニケーションをつくる
この記事でのコミュニケーションをつくるとは、顧客一人ひとりに合わせた施策によるコミュニケーションの最適化を指します。つまりは、顧客に必要なコンテンツを最適なタイミングで最適な接点で届けることを指しています。
パーソナライズを実現する
マーケティングにおけるパーソナライズとは、顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションの最適化を指します。前述で申し上げた通り、最適なコンテンツを最適なタイミングで最適な接点で配信することです。このようなデジタルコミュニケーションにおけるパーソナライズは以下リストのような組み合わせによって実現します。
- パーソナライズの元となるリスト例
・ 顧客の所属するクラスター
・ 所属クラスター~次ステップのクラスターに進む育成シナリオ(施策案)
・ 顧客別に最適な接触チャネル(メール、LINE、SNS、広告など)
・ 顧客別に最適な接触タイミング(曜日、時間帯など)
・ 顧客別の興味関心に適したコンテンツ(コンテンツやクリエイティブ)
上記のように、パーソナライズに必要な項目を設計します。CDP等にに格納された顧客IDに対して項目ごとにフラグを付与します。
例えば、ある顧客に対しては「チャネル」は開封率が高いメールで、「タイミング」は日曜日の夜、「コンテンツ」はシズル感たっぷりのお酒と合うディナーのような具合です。顧客ごとにこのようなフラグを管理しておくことで、自動的にパーソナライズされたCRMのシナリオが実行できます。
マーケティングツールの連携を考える
顧客に最適化されたシナリオを作れたら、次にツール連携を考えます。仮にCDPを使えるのであれば、DWHなど従来のデータ基盤との違いの1つとして、マーケティングツールと自動連携できるというのも特徴です。MA(マーケティング・オートメーション)ツールや、Web接客ツール、レコメンドツールなどとの自動連携が可能です。これらのツールは顧客とのコミュニケーションを実行する際に必要となります。
ちなみに、CDPには、コネクターと呼ばれるツール連携機能が内蔵されています。
例えば、LINE配信したいユーザーリストをCDPから自動抽出してLINEのAPIに連携できます。LINE配信だけでなくメールやアプリプッシュなども自動化できますし、配信のコントロールであれば、MA側で一括して連携管理することも可能です。
仮にMA側で配信制御を管理する場合は、CDPで新規のフラグを付与した顧客データをMAに連携します。
新規フラグとはMAではキャッチできない店舗での「購買情報」やコールセンターへの「問い合わせ情報」などのオフラインデータが該当します。MAではCDPによりアップデートされたフラグに基づいて適切なシナリオを配信します。このような連携機能を活用することで、リアルタイム&自動的&パーソナライズできる仕組みを構築できます。
CDPの話を中心に書いていますが、データを統合し活用する際は、CDPをマーケティングの実行基盤として活用していくのが有用です。CDPは、DWHのようにデータを管理することが目的ではなく、顧客データを統合し、マーケティング施策を実行するための司令塔になります。分析対象のデータベースであるDWHと比べ、マーケティングに特化した機能が搭載されているのです。顧客への直接的なコミュニケーションを実行管理した上で、顧客情報の更新管理も一元化するマーケティングデータ基盤=CDPです。
マーケティングデータ基盤にCDPがいい理由
CDPとツール連携の話に触れたので、ツール側が独自に保有するデータとCDPデータの活用における決定的な差も解説します。
各ツールも独自にCRM用の顧客DBを有しています。サイトにタグを設置してCookieベースで顧客の行動データを収集するタイプが大半です。アプリの場合はSDKを導入し、Webサイトのタグ同様にデータを収集します。
ただし、これらのデータではリアル店舗などのオフラインデータが含まれないため、時として不十分になります。そのようなデータも統合管理された顧客データを持つCDPを活用することが、CRM施策の質を向上させることは想像しやすいのではないでしょうか。
「データをあつめて」「データをつくる」ことで「サービスをつくり」「コミュニケーションをつくる」。当社が数々のプロジェクトで実践して得た、マーケティングデータ基盤構築の型とも言える4つの手順が皆さんの何かヒントとなれば幸いです。
- マーケティング基盤構築の4つの手順
・データをあつめる(別記事)
・データをつくる(別記事)
・サービスをつくる(この記事)
・コミュニケーションをつくる(この記事)
この記事を書いた人
- 小畑 陽一
- 株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)
music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)
データ分析や基盤構築、プロダクトの活用などについて、貴社の状況と目的に合わせて幅広くご提案します。
カスタマーデータのマーケティング活用にお困りの際はぜひお声がけください。