業界別CDP活用メリット:メーカーモデル編
この記事では、 業界別の代表的なCDP活用メリットをお伝えしています。今回はメーカーモデル編です。
CDPは、導入する会社のビジネスモデルによって利用目的や活用方法が変化します。UNCOVER TRUTHでは、多数のCDP導入プロジェクトを経験する中で、ビジネスモデルに着目するようになりました。なぜならば、CDP活用の主目的であるCRMの設計は、ビジネスモデルによって基本要件が決定されるからです。
メーカーとは主に製品を販売するときに流通や卸を経由する業態です。直接消費者に商品を届ける機会が少なく、商品を卸業者や小売業者に納入するBtoBtoC型のビジネスモデルです。顧客の実態を知るために調査(インタビューやアンケート)を駆使して顧客解像度を引き上げるノウハウを有している業界とも言えます。
販売形態をD2Cに寄せるという手段もあるかと思いますが、既存の莫大な流量を依存している流通に配慮することから、直販を避けているメーカーさんの方が多いのではないでしょうか?そんな制約条件を前提にしながらも、ここ最近では、データドリブンに顧客理解を促進している事例が出てきています。
この記事では、販売は流通にお任せしながらも、CDPを活用し顧客と直接コミュニケーションでつながりながら「購買を後押しする」CRMを実践している事例を、社名を出さず抽象化しながらお伝えしたいと思います。
目次
メーカーモデルとは
このビジネスモデルは、ユーザー接点が薄く、ユーザー理解が困難なケースがほとんどです。企業とユーザーの間に中間流通である卸業者や小売業者(スーパー、コンビニなど)が介在しており、ユーザーの反応をダイレクトに受け取る機会がなかなかありません。
ユーザー理解を促進するためには、ユーザーとのダイレクトなコミュニケーションチャネルを形成する必要があります。いまでは、そこで得られるユーザーデータを収集、分析するため、CDPを含めたマーケティング基盤を構築する動きが加速しています。ダイレクトチャネルを活用してCRMを推進し、ユーザーとのエンゲージメントを高めることで購買を後押しします。BtoBtoC型のビジネスモデルは、中間流通との関係を維持しながら、ユーザーに対してBtoC型のダイレクトコミュニケーションへの進化を期待されています。
以前から「ブランドサイト」を設置してキャンペーンや情報発信を行い、楽天やAmazonなどへ送客するのもありました。最近では会員化されたエンゲージメントを目的としたブランドサイトが増えてきている印象です。Panasonicの「クラブパナソニック」や、花王の「Lidea」など、オウンドメディアを運営して、ポイント制度などでロイヤルティマーケティングを実践しているケースが増えています。
メーカーモデルにおけるCDP活用とは?
日用品や化粧品などを製造するメーカー(消費財メーカー)は、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの流通網を通して商品を販売します。直接的なユーザー接点をもたず、間接的なユーザー接点が広範囲にわたる業態です。このように直接的なユーザーとの接点が薄い業態では、どのようにCDPを活用すべきでしょうか。
消費財や食品メーカーにおけるマーケティングは、CMや新聞広告などのマス広告がメインでした。近年では、各社ともオウンドメディア(自社保有のメディア)に注力し、ユーザーとの接点を広げはじめています。とくにWebマガジンやブログ記事など、ブランドや製品の魅力を伝えるメディアを軸に、ダイレクトにユーザー接点をもつ企業が増えている印象です。
オウンドメディアの活用にあたっては、メディアとしての情報発信に限らず、会員システムを導入することで、継続的なコミュニケーションを育む動きもあります。会員化することで、店舗誘導や新商品情報など、マスメディアでしか伝えられなかった情報を、顧客へダイレクトに発信でき、購入への促進につながります。ブランドの想いを丁寧に伝えることのできる会員基盤は、メーカー企業にとって重要な事業基盤です。会員化するハードルを下げるために、ソーシャルログインなど、SNSアカウントと連携できるようにしている企業も増えてきました。
少し話が脱線しますが、個人情報保護法の改正により1stPartyの自社会員は日増しに重要性を帯びています。顧客と直接つながるオウンドメディアの存在は、メーカー業態にとってなくてはならないものになるでしょう。
メーカーにおけるCDP活用は、このように獲得した会員を中心に、CDPでデータを集め、顧客セグメント別にコミュニケーションを行います。もちろん会員に至っていないWeb訪問者なども顧客として捉え、会員化(リード化)することも考えられます。
メーカーにおける顧客に集まるデータの例を挙げると、会員の属性情報(性別、年齢、居住地)に加えて、アクセスログ、アンケート情報、メルマガログ(開封・クリック)、キャンペーン応募情報、セミナー・イベント参加情報、購買履歴(自社ECのみ)、問い合わせ情報などが挙げられるでしょう。
これらの属性や行動データと購買データとの相関分析をもとに、顧客分類やロイヤルティプログラムを構築します。これにより、顧客セグメントごとに最適化された、コミュニケーション施策やプロモーション施策が可能となります。
また、顧客接点の薄さからデータが多く集められないこともあります。このような課題がある場合、CDPを活用した他社とのデータ連携を行う事例もあります。ハッシュ化(元のデータに戻せない方法で元データを置き換えること)したメールアドレスや、3rd Party Cookie(自社サイト内で他ドメインから発行しているCookie)をベースに、他社の調査データ(アンケート回答など)や購買データ、顧客特性データを自社顧客に紐づけることで、データのエンリッチ化(拡張すること)による顧客理解の向上を行っています。
自社データと外部データを組み合わせたセグメントマーケティング例
上記の図解を例に説明します。CMのようなマス広告で商品を認知し、スーパーやコンビニで商品を購入する顧客がいたとします。商品のことが気になり、Webサイトへ訪れてくる顧客もいるでしょう。また、購入後に商品に貼ってあったQRコードからキャンペーンやイベントへ応募する顧客もいるでしょう。
このように、プロモーションや商品購入をきっかけとして、Webサイトへ訪れたり、会員登録を行う顧客行動が発生します。これらの顧客情報はオウンドメディアでの接触であるため、CDPにデータが格納され、Webサイト来訪者や会員登録者としてデータが蓄積されます。
会員登録者であれば、デモグラフィック(属性)データやアンケートデータが付与されます。もし他社データとの連携をしていれば、趣味・嗜好や購買経験などの顧客特性データが付与され、それらを併せてCDPで統合できます。
このように顧客の情報を広範囲に収集できれば、顧客理解は加速されるでしょう。このようなリッチな顧客データを形成することで、顧客に最適化されたコミュニケーションの実行が可能となります。
顧客に紐づくデータからセグメントを作成し、メールやLINE、Webサイトやアプリでのポップアップ(接客施策)などで、セグメントごとに適したコミュニケーションやプロモーションを行うことができ、顧客へダイレクトに購入促進を実施することができます。このように、オウンドメディアを通して顧客接点をつくり、CDP内で顧客に紐づくデータを増やしながらセグメント化し、コミュニケーションを最適化することで、購買促進につなげられます。
この記事を書いた人
- 小畑 陽一
- 株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)
music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)
データ分析や基盤構築、プロダクトの活用などについて、貴社の状況と目的に合わせて幅広くご提案します。
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