<小川卓が解説!>まずは実践!CRM第2回:計測するためのデータ取得と設計環境を整える
UNCOVER TRUTHのChief Analytics Officer の小川です。このシリーズでは、まずは実践!という事で、なるべくハードルが低い「CRM」の実践方法について全6回でお送りしていきます。CRMというと難易度が高そう!というイメージを持たれる方も多いかと思いますので、そのハードルを下げて、実際にまずは1回試してみることをゴールにします。
前回はユーザー行動と態度変容についての記事でした。今回はCRMを実現するために必要なサービスやツールを前半で紹介し、後半ではそれを整えるための方針について触れていきます。
目次
CRMを実現するために必要な主なツール
ウェブサイト上でCRMを行う際に必要なツールは大きく分けて5つになります。
1) ユーザーの行動ログを分析するツール
(Google アナリティクス / Adobe Analytics/ ヒートマップツール 等)
2) リード管理とメールコミュニケーションのためのツール
(MAツール:代表プレイヤー Oracle Marketing Cloud / Marketo / Salesforce Pardot/ SHANON / Satori)
3) 営業が顧客とのコミュニケーションのために利用するツール
(CRM/SFAツール:代表プレイヤー Salesforce / Senses / Microsoft Dynamics / Synergy等)
4) データを分析するためのツール
(BIツール:代表プレイヤー Power BI / Tableau / Einstein Analytics 等)
5) ウェブサイト上で施策を実行するためのツール
(Google Optimize / Adobe Target / KARTE / b→dash / Sprocket / Repro 等)
UNCOVER TRUTHでもこれら5つのツールを利用して、CRM活動に従事しております。
全部を一気に行おうとすると上手くいかない
理想で言えば、全体をプランニングして、適切なツールを一気に導入するほうが効率は良いのではないか?と筆者は感じています。しかし、その準備にかかる工数やコストなどを考えると、全部一気に導入することはオススメしません。
いずれにせよ、まずはユーザーの行動パターンを整理し、CRMを通じてどういった世界を実現したいのか?をプランニングする工程は行っておいた方が良いです
一足飛びに全て行おうとすると途中で破綻してしまうことがほとんどです。そこで、まずは大きく2つに分けて考えましょう。
「利用者」で分類して導入を進めていく
今回紹介した5つのツールですが、
大きく分けると利用者は以下の通りになるのではないでしょうか。
全体の絵は描きつつも、
まずはそれぞれのツールの中で出来ることの精度を上げていくことをオススメします。
例えばMAツールであれば、「スコアリングルールの策定」「シナリオメールの配信と振り返り」「取得項目の精度改善」などが考えられます。行動ログ分析ツールであれば「適切なデータ取得」「運用レポートの作成」「分析と改善案提示」などになります。
それぞれの精度を上げない事には、これらを連携して活用する際にいろいろな不整合が起きてしまいます。
CRMを行う上で最も大切なのは「必要かつ正しい粒度で、情報が確実に取得出来ているか」になります。という事で、現在既にいくつかのツールを導入している場合は、まずはそれぞれのツールで取得しているデータの精度を上げることが重要になってきます。
ツールのコストは僅か、本当にかかるのは運用コスト
こういったツールを導入する際に「お値段が高い!」という話をよく聞きます。ツールによっては無料(Google アナリティクス)のものもあれば、月額数万円~数十万円するツール(MAやCRM/SFAツールなど)もあります。そのため、CRMの仕組みを維持するために、年間数百万円はかかってしまいます。
しかし、それ以上に大切なコスト(そして成功に導くために最も欠かせないコスト)が人件費になります。ツールを利用するには、利用できる人の準備と、実際に稼働を取る必要があります。全てのツールをもし1人で見ることが出来たとしても、その人の人件費で年間数百万円はかかるでしょう。
「CRMに取り組みたい!」という話が社内でおこると、ツールのコストが議論に上がりがちですが、成功に導くための体制にかかるコストの事も必ず考えておきましょう。
全て同時に行う必要は無いが、将来を見据えた「設計」は必要
まずは単体で進めながらも、将来的にこれらのツールのデータを連携する事でより精度が高い分析や改善提案が出来ます。
例えば行動ログ分析ツールとMAツールを連携すれば、リードごとの具体的なサイト内での動きや流入元を把握できます。お客さんとコミュニケーションする時に、追加の情報があれば話もしやすいでしょう。
CRMツールと施策実行ツールが連携出来れば、お客さんのステータスに応じてコンテンツをサイトに出せるでしょう。例えばセミナー参加した人がサイトに来たときに、セミナー内容にあったコンテンツをTopページで表示するなどが考えられます。
こういった将来の連携を見据えて考えておくべきことは2つです。
1つは「利用するツールがどのツールとそもそも連携が可能なのか?」というのを整理しておくこと。
もう1つは「連携するために必要となるキー(同一人物であることを特定するためのID)が何になるかを決めておき、それぞれのツールで取得出来る状態にしておくということです。
この部分をおろそかにすると、複数ツールの連携をするときに苦労することになります。
ただ、いずれにせよ大切なのは「CRMを通じてどういった施策を実現したいか」を整理しておくことになります。それがあって、初めて上記の設計や検討が出来るでしょう。
最後に
今回はCRMを実現するために必要なツールや設計に関して紹介してきました。全体の設計は行いつつも、まずは個別ツールの最適化と、その中で出来る施策にまずは取り組んでいきましょう。
各ツール内での施策が安定してきたら、データを連携して、BIツールなどを活用した分析と改善のチャレンジが出来るかなと。その場合も、一気に行うのではなく、まずは1+1という形で2つのツールの連携から始めていきましょう。次回は、「ユーザークラスタ」の考えかた、そして事例について紹介していきます。効率的にコミュニケーションをとるために欠かせない、ユーザークラスタの考え方を次回は学びましょう。
- 小川 卓
- 株式会社UNCOVER TRUTH
- CAO(Chief Analytics Officer)
Webアナリストとしてマイクロソフト・ウェブマネー・リクルート・サイバーエージェント・アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。デジタルハリウッド大学大学院客員教授。 主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。
UNCOVER TRUTHでは様々な業界の企業さまのWeb事業を成長させるお手伝いをさせていただいております。Webサイト改善についてご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。