<小川卓が解説!>まずは実践!CRM第4回:ユーザーを分類して計測できる状態にする
UNCOVER TRUTHのChief Analytics Officer の小川です。このシリーズでは、まずは実践!ということで、なるべくハードルが低い「CRM」の実践方法について全6回でお送りしていきます。CRMというと難易度が高そう!というイメージを持たれる方も多いかと思いますので、そのハードルを下げて、実際にまずは1回試してみることをゴールにします。
前回は分類の方法についての記事でした。
今回は分類の具体的な例と分類されたグループを計測するということについて触れていきます。
目次
2種類の分類軸
前回の記事でも触れましたが「分類ごとに異なる施策を行えるか?」という視点でセグメントを作成する必要があります。この時に大きく分けて2種類の考え方があります。
1つは「時間軸の分類」もう1つは「ユーザータイプの分類」です。
どちらが正解ということはありませんが、
「時間軸」で設定した場合、分析は「ユーザータイプ」で行い、「ユーザータイプ」で設定した場合、分析時には「時間軸」で行う形になります
以下の図を見てみましょう。
こちらは「時間軸」でセグメントを設定したパターンです。まず時間軸でユーザーがどのステージにいるかを定義し(黒線ファネル部分)、その後にユーザータイプ(青・オレンジ・黄色の楕円)ごとに見ます。ユーザータイプは「流入元」「申し込んだサービス種別」「会社規模」などが一例になります。
こちらはユーザータイプでセグメントを設定したパターンです。まずはユーザータイプを決めて、その後にそれぞれのファネルを分析するという形になります。
では具体的な例を見ていきましょう。
時間軸の分類例
継続購入が重要な単品通販サイトの場合を例として、以下の5つのグループに分けてみました。
(以下すべて直近半年で判断)
1)【購入回数=0】かつ【カートに商品未投入】
2)【購入回数=0】かつ【カートに商品投入済み】
3)【購入回数=1】
4)【購入回数≧2】かつ【同ジャンル商品を購入】
5)【購入回数≧2】かつ【別ジャンル商品を購入】
大切なのは上記の分類を見て、施策のアイデアや実行出来るイメージが沸くかです。それぞれを増やすために、そして次のステップに進んでもらうための集客方法やレコメンド内容、コミュニケーション手段などをイメージしてみましょう。
サイトで販売している商品や商品形態によって、期間を変える(どれくらいの頻度で必要な商品なのかによって変更)、購入回数では無く金額で見る(商品の料金差が大きい場合に有効)、継続購入期間で見る(単品通販の複数回購入が前提の商品)でもよいでしょう。
BtoBの場合は、
第1回で紹介したユーザーファネルをベースに分類を作るのもよいでしょう。以下の例をご覧ください。
このようにユーザーの行動が進むたびに別の分類に移動していく形になります。
ユーザータイプの分類例
ユーザータイプで分類する場合、時間軸は意識せず分類をしましょう。また前回紹介したクラスタリングの方法を活用して、分類を行っている場合は時間軸での分類が出来ませんので、自動的にユーザータイプでの分類になります。
たとえばECサイトであれば以下のような形が考えられます
1)特定の商品(あるいは商品ジャンル)にしか興味がない人
2)さまざまな商品(あるいは商品ジャンル)に興味がある人
3)オンラインでの購入では無く店舗での購入を検討している人
クラスタリングを使っていた場合、利用した説明変数によっては以下のような分類がBtoBサイトの場合は作成されるかもしれません
1)【事例を3ページ以上見ているユーザー】かつ【訪問回数が3回以上】
2)【事例を3ページ以上見ているユーザー】かつ【訪問回数が3回未満】
3)【事例を3ページ未満】かつ【製品概要を10分以上見ているユーザー】
4)【事例を3ページ未満】かつ【製品概要を10分未満見ているユーザー】
見ての通り、どちらの例も時間軸という概念は無く、似た(あるいは似ている)ユーザーを分類しているという形になります。
さて、自社サイトでの分類が出来たら、次は計測が出来る状態を作る必要があります。
データを計測できる状態にする
まず分類したデータをどのツールのどのデータで取得するかを整理しましょう。たとえば先ほどのBtoBサイトの9ステップの例であれば、ステップ1~2は「行動ログ分析ツール」3~4は「MAツール」5~9は「SFA/CRMツール」といった形になります。
ツール間で共通のIDがあれば、1~9のデータをそれぞれID単位で紐づけることが出来るようになります。具体的には「サイトでどういった行動をした人が契約に繋がりやすいのか」「どの方法でリード獲得したかによって、打ち合わせ実施率は変わるか」などを把握できるはずです。
最初はそれぞれのツールで(自動)連携が出来ていなくても大丈夫です。まずは1~9においてそれぞれ何社(あるいはBtoCサービスであれば何人)いるかを可視化しましょう。
可視化が出来たらいよいよ分析のフェーズに入っていきます。
第5回の記事では分析方法について、そして分析を施策に活かす方法を紹介します。お楽しみに!
- 小川 卓
- 株式会社UNCOVER TRUTH
- CAO(Chief Analytics Officer)
Webアナリストとしてマイクロソフト・ウェブマネー・リクルート・サイバーエージェント・アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。デジタルハリウッド大学大学院客員教授。 主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。