<小川卓が解説!>まずは実践!CRM第5回:分析に基づいた改善施策を考えて実行する
UNCOVER TRUTHのChief Analytics Officer の小川です。
このシリーズでは、まずは実践!ということで、なるべくハードルが低い「CRM」の実践方法について全6回でお送りしていきます。
CRMというと難易度が高そう!というイメージを持たれる方も多いかと思いますので、そのハードルを下げて、実際にまずは1回試してみることをゴールにします。
前回は分類を行い計測するところまでを紹介いたしました。この状態までたどり着くことが出来れば、時間軸あるいはユーザー軸での集計が可能になります。
例えば、以下のようなユーザータイプ別のレポートも作成できるでしょう。
集計が出来るような状態になったら、どのユーザー群の数を増やしたいかを社内で議論しましょう。KPIを決めるのと同じような形で、現在自社で一番伸ばしたいユーザー群をまずは特定してみましょう。
もちろんすべてのユーザー群を増やしたいかとは思いますが、すべての施策を同時に出来るわけではないので、選定が必要になります。
選定の優先順位は・・・
「ビジネスインパクト」&「施策が実行出来る数」
で判断するとよいでしょう。
さて、今回は具体的な分析方法について紹介をしていきます。
目次
特定ユーザー群を増やすための2つの方法
では具体的にどのようにユーザー群を増やすための分析を行えばよいのか?
具体的な方法についてみていきましょう。
原則として、あるユーザー群を増やすために出来ることは2つしかありません。
1つは「サイトにそのユーザー群に属する(あるいは属する可能性が高い)ユーザーを連れてくること」そしてもう1つは「1つ前のユーザー群からの遷移(率)を増やす」です。図にすると以下のような形になります。
直流入を増やすためには、どの流入元がユーザー群3を連れてきやすいのか?という観点で集客施策を評価する必要があります。つまり単純に流入量が多いとか、CV率が高いではなく、ユーザー群3の人数(あるいは割合)で集客を評価するという事です。
遷移(率)を増やすためには、1つ前のユーザー群から目的のユーザー群に移動する人(今回の場合はユーザー群2からユーザー群3になる人)と、そうではない人(ユーザー群2にとどまってしまう人)の行動の違いを分析し、より次のユーザー群に繋がりやすい行動を促進するという考え方になります。
この2つを分析する事で、どの集客やサイト内機能やコンテンツに可能性があるかを把握する事が出来ます。
直流入を増やすための分析
それぞれの分析方法をもう少し詳しく見ていきましょう。直流入を増やす場合は、どの流入元が貢献しているかを具体的に分析していきましょう。以下のレポートは、あるサイトの参照元別の転換率(訪問者の内何%が該当ユーザー群になったか)を表したものです。
作成方法としては、それぞれの流入数を分母とし、分子は「該当ユーザー群の条件を含むセグメント」を作成し流入元ごとの数値を確認します。この2つの数値を割り算する事で転換率を出しています。転換率を比較することで、より該当ユーザー群を増やすのに貢献している参照元を特定することが可能になります。
もう少し深く見ていきたい場合は、間接効果なども加味して「ユーザー」軸のセグメントを利用してみるとよいでしょう。しかし、いったんはセッション単位で評価して傾向を掴むことをオススメします。
事業自体はサイトの最終コンバージョンで動いているため、いくら狙っているユーザー群の転換率が低くても、CV率や数が高い場合、その集客は当然大切です。貢献が低い流入元に関しては、ランディングページと参照元でのクリエイティブや表示内容などを元に改善方針を考えましょう。
方針としては大きく3つ。
1)ランディングページを改善する
2)流入元のクリエイティブを変更する
3)(広告等であれば)出稿を停止し効果が高いメディアや施策に寄せる
というのが中心になるでしょう。
遷移(率)を増やすための分析
遷移(率)を増やす分析に取り掛かるために、最初に2つのセグメントを作成しましょう。1つは「遷移したユーザーセグメント」もう1つは「遷移していないユーザーセグメント」。GAですと以下のようなセグメント例になります。
■遷移したユーザー(前ユーザー群の条件の後、該当ユーザー群の条件を満たしている)
■遷移していないユーザー(前ユーザー群の条件は満たすが、該当ユーザー群の条件は満たさない)
2つのセグメントを作成する事が出来たら、後は2つの違いを見つけていくという事になります。主に見るべきレポートは以下です。
1)見ているページ群に違いが無いか
2)主要ページからの導線に違いが無いか
3)デバイスや訪問回数での違いが無いか
4)利用している機能(イベント系データ)やユーザー属性(カスタムディメンション系データ)に違いが無いか
また会員ID等が取得出来ている場合は、それぞれのユーザー群のIDをGAより提出し、BIツール等を使って会員の属性情報で比較してみるのもよいでしょう。
このような分析を行うと、どういったユーザーが遷移しやすいか、そして遷移しにくいかというパターンや傾向が見えてくるのではないでしょうか。たとえばコンテンツ別の転換率を評価するには以下のような表を作るとよいでしょう。
最後に転換しやすい人、転換しにくい人をなるべく文章で言語化することが大切です。
ここまで出来れば、後は施策の実行と評価に進みます。こちらに関しては次回(最終回)で紹介をしていきます。
さて、今回は分析について紹介をしてきました。大切なのは態度変容を起こした人と、起こしていない人の流入元や行動の違いから、ユーザーの考えや思いを想像してみることです。
周りに説明する時にも数値の情報は大切ですが、その背景の意図を考えてみることです。「このページに流入してきているということは、まずは基本的な用語から把握したいと考えていそう」だとか、「複数の商品を見比べながら条件を変えているということは、真剣に探しているけど中々決めきれない人だな」といった具合です。
CRMの名前の通り「Customer」と「Relationship(関係)」を作るためには、相手のことを知ることが大切です。ユーザーの事を理解する上で、データを読み解くことは欠かせません。ぜひ分析のフェーズを通じてカスタマーの理解促進に努めましょう。
次回で「まずは実践!CRM編」は最終回となります、最後までお付き合いください!
- 小川 卓
- 株式会社UNCOVER TRUTH
- CAO(Chief Analytics Officer)
Webアナリストとしてマイクロソフト・ウェブマネー・リクルート・サイバーエージェント・アマゾンジャパンなどで勤務。解析ツールの導入・運用・教育、ゴール&KPI設計、施策の実施と評価、PDCAをまわすための取り組みなどを担当。全国各地で講演を毎年40回以上行っている。デジタルハリウッド大学大学院客員教授。 主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。