BIダッシュボード。状況と用途に合わせてデータを可視化する
この記事は、データの可視化をするためのダッシュボードの作り方について書いています。主にCDP構築後を例として状況と目的に応じてどのようなデータを見るべきかについて書いています。
目次
会社の資産である「データ」は多くの関係者に見えるように
まず、ダッシュボードの説明ですが「ダッシュボード」=「データをグラフィカルにまとめ、サマライズされた画面」のことをここでは指します。日ごろからBIツールなどを使用し、ダッシュボードを作成している方も多いのではないでしょうか?
たとえば、CDPを構築することで、サイロ化していたデータが集まり、自社顧客の様々なデータが見えるようになります。そもそもデータとは「全社にとって価値ある資産」です。多くの関係者にデータを見てもらい、顧客の理解や施策の立案・検証に活用していくためにも、データを可視化するということは、データ活用に向けた非常に重要なステップです。
CDPツールによっては、直感的な操作でCDP内のデータを確認できたり、ツール内にダッシュボード機能があり、容易にデータを理解することができたりもします。
ダッシュボードの作り方
前段では、ダッシュボードの必要性を説いてきました。ここでは、どのようなダッシュボードをつくればいいのかを説明します。ダッシュボードは、一目見て理解できるものが望ましく、ビジュアライズするグラフはシンプルにしましょう。
実際、作業にとりかかると、見た目の調整よりも、どのようなデータをダッシュボードで可視化するかを決める方が難しいです。
初めからなんでも見れる理想的なダッシュボードをつくることは難しいので「CDP構築初期」⇒「顧客分類やKPI設計後」⇒「施策検証」という目的やフェーズに合わせて、見るべき項目を洗い出し、バージョンアップしていくことをおススメします。
併せて「フィルター」機能も必ず作成しましょう。
「アクセスログ対象期間」や「会員登録期間」といった集計対象期間や、「会員フラグ」「購買フラグ」「アクセス訪問フラグ」など各種データの有無があるとよいですね。
データやグラフ自体がシンプルでも、このフィルターを用いることでデータを比較したり深掘りしたりすることができるようになるので、ダッシュボードの活用が進みます。見るべきデータの項目は「KGI・KPI」「属性」「行動」の3分類で考えると整理しやすくなります。
▼KGI・KPIで見るべきデータ▼
- 総顧客数、成果指標(購買、売上、申込など)
- 顧客分類ごとの顧客数
- その他KPIにあたる行動指標 など
▼属性で見るべきデータ▼
- デモグラフィック情報
- アンケート情報
- 各種ID保有状況 など
▼行動で見るべきデータ▼
- トランザクションデータ(アクセスログ、購買履歴、メルマガ開封)
- クリック
- キャンペーン応募など
状況と目的に合わせたダッシュボード要件
上図を参考に今回は、データ統合=CDP構築後を例として、フェーズ別のダッシュボード要件を説明していきます。
CDP構築初期(構築された直後)
CDPが構築された直後では、統合されたデータを関係者が確認し共通認識を持てるダッシュボードを作成しましょう。
注意点として、データが統合され始めると見てみたいデータが多くあります。全部見られるようにしようとすると、気づいたときには収拾がつかないダッシュボードになっていることも少なくありません。そのため、まずは「統合されたデータを把握する」ということを目的とします。
KGI・KPI部分は、統合データでの顧客数や成果指標を把握するために利用します。属性と行動は、どのような人か?どのような行動をしているか?が簡易的にわかるデータ・グラフのみで問題ありません。前述のとおり、グラフ単体がシンプルでも、「フィルター」を活用することでデータの深掘りができます。これが「CDP構築初期」のダッシュボードであることを認識し、まずはここから関係者全員がデータ活用できる土台を作っていきましょう。
顧客分類やKPI設計後
ここでは、顧客分類ごとの顧客数や、KPIにあたる行動指標を可視化します。
これにより日々の進捗や目標に対して「なぜこのような数値なのか」を意識して観測できるようになるため、顧客インサイトの発見につながりやすくなります。
例えば、新規顧客層が前月に比べて増加傾向にあるとわかったときに、新規顧客層に絞って属性と行動のデータを見ることで、その属性や行動のデータ傾向から、新規顧客が増加した要因に気づけるようになるでしょう。属性・行動部分においても、よりデータを深掘りできるような項目を増やします。属性ではアンケート情報や獲得・流入チャネルなど、行動ではアクセスログも閲覧ページだけでなく遷移行動などを追えるようにします。遷移行動まで可視化することで、特定ページからどのように顧客が動いているのか、またどのページに遷移するとよいのか気づくことができ、ページやサイトの改善に活かせるでしょう。
施策検証(データを活用した施策実行を行っている状態)
CRMなどの施策の効果を検証しながらデータを活用した改善サイクルを回すことが定着するようにダッシュボードを構成します。
顧客分類やKPI設計後で作成しているダッシュボードでも流入チャネルデータや閲覧ページといった行動データをもとに施策の振り返りはできます。ここではさらに、施策対象者の行動を深堀りできるよう、施策にあたった顧客の判別ができるフラグを作成したり、施策ごとの詳細データ(例えばメルマガにおけるメルマガ内のURL別クリックデータなど)を用意したりすることで施策の効果検証を細部まで行えるようにします。
また、検証だけでなく施策立案に繋げられるように、顧客分類ごとの行動データも可視化しておきます。
例えば、下図のように顧客分類ごとの購買履歴を比較しながら見られるようにします。ロイヤル顧客とロイヤル以前の購買特徴の差分からロイヤル転換へのキードライバーが推察できることで、施策において何を訴求すべきかのヒントが得られます。ここまでつくり込むとデータ量も多くなるため、ダッシュボードで見る必要があるのか、アドホック分析として切り出すかの精査は必要ですが、汎用的に使えることを意識するとよいでしょう。
このように、集約されて統合されたデータは、顧客の理解や施策の立案・検証などに最大限に活用していくことで価値が生まれます。データをマーケティングに活用していくための準備として、まずは必要に応じた可視化を実施していきましょう。
この記事を書いた人
- 小畑 陽一
- 株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)
music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)
データ分析や基盤構築、プロダクトの活用などについて、貴社の状況と目的に合わせて幅広くご提案します。
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