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CDP導入プロジェクトの停滞を事前に防ぐ4つの準備

この記事では、CDP導入プロジェクトの停滞を防ぎ、成功へ導くために必要な4つの事前準備項目について書いています。

当社UNCOVER TRUTHには、日ごろからCDP関連のご相談やご質問を多くいただいております。

今回は、筆者が最近特に重要度が高いと感じている「CDP導入プロジェクト開始時には準備しておくべきこと」についてお伝えできればと思い記事を書きました。

CDPの導入プロジェクトを始める際、準備しておくべき重要な“大前提”があります。この大前提を無視してしまうと「手戻り」や「頓挫」や「工数増加」や「期間遅延」など、耳を塞ぎたくなる恐ろしい結果が待っています。筆者自身が、いくつかの大反省プロジェクトを経験していく中で、導き出した”大前提”となる準備項目は以下です。

  • CDP云々の前にビジネスの目的を定める
  • プロジェクトにシステム部門とマーケ部門のメンバーをアサインする
  • 予算と期間にバッファを設ける
  • クイックウィンを狙う小さな成果目標を起案しておく

それでは、それぞれの項目について説明していきます。

CDP云々の前にビジネスの目的を定める

CDP停滞プロジェクトを防ぐ4つの準備:CDP云々の前にビジネスの目的を定める
【CDP導入プロジェクトの停滞を防ぐ4つの準備:CDP云々の前にビジネスの目的を定める】

ビジネスでの活用目的が決まっていない中で動き始めているCDP導入プロジェクトが多くあります。実際、筆者も多く経験してきました。

この場合、社長や役員からの「我が社もDXだ!」の掛け声で始まり、主導権を渡されたシステム部門がとにかくCDPやMAなどの箱を用意するのに奔走し、あとは事業部門がなんとか使ってくれるだろうという発想で開始してしまったプロジェクトであることが多いです。

目的(顧客に提供したい体験価値)が決まっていない中で箱物だけを作るのは、当然のごとく失敗する確率が高まります。ハコモノ行政と揶揄された建造物のレガシーが税金を無駄遣いした例は枚挙にいとまがありません。それと同じようなことが民間企業のIT分野でも起きています。

実際、システム部門とSIerだけで進められていたとあるCDPのプロジェクトで、前述のようなヒヤヒヤする場面に出くわしたことがあります。各部門との話合いが進んで行く中で「結局、CDPを導入して何をするのか?」と話が二転三転、時に振り出しに戻り、頓挫してしまったことがあったのを深く記憶に刻んでいます。

CDPの導入、ひいてはデジタルの活用は目的ではなく手段です。

デジタルを活用して「ユーザーに何を届けたいか」「どんな新たな体験価値を提供したいか」少なくとも「何を解決したいか」を明確にしたビジネス要件を先にしっかりと作らなければなりません。

カスタマーサクセスを定義し、デジタルを用いた顧客への体験価値の加速や増幅、新たな価値を提供できるようなコミュニケーションの設計等、提供する価値を事前に決定しなければなりません。※顧客への提供価値の定義については、こちらの記事に具体例を交えて書いていますので、併せてご覧ください。別記事:CDP導入に失敗しないように。顧客への提供価値を先に定義する

そうすることで、システムへの投資の側面で考えても、無駄な機能やデータを搭載することなく、最短期間でコストバリューもある必要最小限のCDP環境を定義することができます

CDP導入プロジェクトの多くは、顧客への提供価値を考えた上で、ビジネス→マーケティング→システムの順序で、それぞれの要件定義を固めていきます。そのため、ビジネスでの活用目的を定めることはプロジェクト開始時に事前に準備しておくべき、大前提となる項目なのです。※CDP導入時に必要なそれぞれの要件定義については、こちらの記事も併せてご確認ください。別記事:CDP導入の失敗を減らす。プロジェクトを成功に導く3つの要件定義

プロジェクトにシステム部門とマーケ部門のメンバーをアサインする

CDP停滞プロジェクトを防ぐ4つの準備:プロジェクトにシステム部門とマーケ部門のメンバーをアサインする
【CDP導入プロジェクトの停滞を防ぐ4つの準備:プロジェクトにシステム部門とマーケ部門のメンバーをアサインする】

CDP導入プロジェクト、マーケティングDXは顧客と企業の関係性を大きく変えていく取り組みです。これは、全社に大きく影響していく、会社の未来をかけた変革事業であることが多いため、ビジネス推進をする部門がプロジェクトにコミットして参画する必要があります。

筆者の経験上で理想的だったプロジェクトチームは、マーケティングがプロジェクトリーダーを担い、役員クラスがオーナーとなり、経営企画、営業部門、システム部門などの各部門からエース級人材を投入しているCDP導入プロジェクトでした。本来こうあるべきです。

CDP導入プロジェクトを通して、オンラインとオフラインのデータは統合され、オウンドメディアや自社ECやモール、SNS、そして店頭接客や商品パッケージに至る、全ての顧客接点において新たな顧客体験や統合されたコミュニケーションの実現を目指します。

これは、会社全体で顧客との接し方を変えていく道のりであり、全社に横串を通すプロジェクトです。ゆえに、プロジェクトメンバーのアサインはプロジェクトの成否に関わる重要な準備項目となります。

予算と期間にバッファを設ける

CDP停滞プロジェクトを防ぐ4つの準備:予算と期間にバッファを設ける
【CDP導入プロジェクトの停滞を防ぐ4つの準備:予算と期間にバッファを設ける】

全社に横串を通して、全ての顧客接点におけるコミュニケーションの変革を起こそうとした場合、それだけ検討事項が指数関数的に増加します。

例えば、店舗とECの両方のチャネルで商品を販売をしているとします。今まではそれぞれで販促施策を行っていましたが、統合されたデータを活用したコミュニケーションを検討すると、顧客の定義自体が変わることが多くあります。

具体的な例を1つお話しします。店舗のみで過去10回以上商品を購入している顧客へのコミュニケーションについてです。

店舗で連続10回の購入履歴と、頻繁にECサイト訪問しているが購入していない、ある顧客のデータが統合されたとします。これをECで商品の品定めをして店舗での買い物を楽しんでいる顧客と判断する場合、購入させるためのリタゲ広告やEC上でのCV誘導施策実施の対象外になりえますよね。

この場合、ECは店舗購入のアシスト役になるという定義ができるため、サイト訪問の際に接客ツールで「お店で待っていますね」「試着のご予約は必要ですか?」「取り置きしましょうか?」とやり取りするのが、ベストなコミュニケーションになるでしょう。

これがもし、EC単独のデータだけを見ていた場合。カゴ落ちなどのリタゲ施策を続けていたのかもしれません。顧客に最適化したコミュニケーションを考えるのであれば、リタゲよりも気持ちよくお店にお越しいただける問いかけ(接客)をするべきですよね

このように、デジタルを活用したコミュニケーションの統合、最適化とは、各部門を横断した設計が必要になるのです。

顧客起点でコミュニケーションの在り方を再考するだけで、KPI指標や施策の在り方そのものまで変化させる可能性も出てきます。前述の例えであれば、EC訪問履歴や頻度、お気に入り追加等の間接貢献を評価指標に入れるのか?が検討対象になるかもしれません。いずれにせよ、統合されたデータ環境を施策や評価に活かしていくためには、充分に全社で議論や検討を行うことが求められます。

そのため、箱ものを作る、構築周りに必要な費用や期間だけではなく、それらを用いて活用推進するために必要な議論や検討を重ねられるように、予算や期間に余裕を持たせる必要があるのです。

クイックウィンを狙う小さな成果目標を起案しておく

CDP導入プロジェクトの停滞を防ぐ4つの準備:クイックウィンを狙う小さな成果目標を起案しておく
【CDP導入プロジェクトの停滞を防ぐ4つの準備:クイックウィンを狙う小さな成果目標を起案しておく】

CDPやMAを導入するDXプロジェクトでは人材リソースをかなり必要とするだけでなく、大きな投資が必要となります。※実際の費用に関しては別記事で解説しています。併せてご確認ください。別記事:CDP導入にはいくらかかる?|項目と費用一覧付

CDPの導入プロジェクトに限らず、投資の規模が大きい&終了まで長期間を要するプロジェクトでは、期待の大きさもさることながら、痺れを切らした社内外から「成果はまだか」と圧力が徐々に生じてきます。

そのため、小さくても良いので「成果」をわかりやすく判断できる施策を最短で実施できるようにします。腰を据えてプロジェクトを推進していくためには、目に見える成果を早めにアウトプットして、ステークフォルダからのプロジェクトへの信頼を高めていく必要があります

例えば、前段でお話した「EC訪問頻度が多くて、店舗でしか買わない人」という条件の顧客だけデータ統合後に真っ先に抽出し、店舗誘導へのコミュニケーションメールを送り、送ったことで来店頻度や来店回数が上がったかの効果検証を行うことならできます。

MAを使わなくても実証実験であれば既存のメールサーバーからでも実施可能ですし、システムが自動化されてなくても手作業でも良いと思います。CDPを入れたら自動化して実行ができるようなコミュニケーション施策を、一旦手作業でクイックに実施して、良い反応が出たら成果を報告できます。CDPを導入する価値を示すことができればクイックウィンとしては成功と言えるでしょう。※とはいえ、この段階では、前段で説明したKPI設定や評価の仕組みまでは考慮する必要はないと考えます。

今回は、CDPの導入プロジェクトの開始時に焦点を当てて”大前提”となる準備項目について書きました。これらの項目は、いくつものクライアント企業とプロジェクトをご一緒する中で、プロジェクトが停滞する普遍的なリスクとなっています。ご参考となれば幸いです。

ここまでお読みいただきありがとうございます。


この記事を書いた人

小畑 陽一
株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)

music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)


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