顧客セグメント(顧客分類)とロイヤルティの考え方。CDPのデータを活用したCRMに向けて
この記事は、CDPの統合データを活用してCRM施策を実行するための「顧客分類とロイヤルティ」の必要性と考え方について書いています。
目次
顧客ピラミッドで顧客分類をつくる
CDPの統合データを活用したCRMでは「顧客セグメント(顧客分類)を作り、それぞれの顧客に対してコミュニケーションの最適化」を図っていきます。
まずは、CRMの基本「売上を多く占める優良顧客の育成・維持」を考えながら顧客を分類します。短期的なデータのみだと、 「上位顧客(2割)が売り上げ全体の8割を占める」パレートの法則 のようにキレイな分布を描かないかもしれませんが、CDPでは、全ての顧客×長期間のデータが入っている状態になり、パレートの法則のようなデータになることが多くあります。ここでお伝えしたいのは、上位2割の顧客とされる優良顧客の重要性です。
まずは、「ファネル」をベースに下図のような「顧客ピラミッド」をつくってみます。
※ 以前の記事:顧客理解のための初期分析4つのステップをベースに作成しています。
ピラミッド図だけを眺めていると、顧客が上の段に上がる指標が「売上中心の成果指標」となることが良くあります。
「売上中心の成果指標」だけではなく「成果指標以外の行動量」や「コミュニケーションのしやすさ」といった「顧客の心理的ロイヤルティ」や「顧客のアクティブ性」も軸に入れて顧客分類を行うことが、顧客にピラミッドの段をより多く早く登ってもらうのに役立ちます。
顧客の心理的ロイヤルティとアクティブ性の考え方
では「顧客の心理的ロイヤルティ、アクティブ性」とはどのようなものか?どのように計測管理するのか?
ロイヤル顧客
前述の顧客ピラミッド図では、最上位の顧客層を「ロイヤル顧客」と区分しています。
顧客分類を行う上で「ロイヤル顧客」=忠誠心がある顧客という特別な顧客ステージがあります。
ロイヤル顧客を売上中心の成果指標 「累計購入金額n円以上」や「継続年数n年以上」だけで定義すると、単に「売上貢献している顧客」とだけ捉えてしまいがちです。しかし、本来の「忠誠心がある顧客」の意味で考えると、「売上貢献」だけではなく「心理的ロイヤルティ」も併せ持っている顧客こそCRMを実施ていく上で重要になります。
顧客の心理的ロイヤルティとアクティブ性を計測する手段
顧客の心理的ロイヤルティとアクティブ性を説明するために、顧客が商品を選ぶ要因を考えてみたいと思います。
- 顧客が商品を選ぶ購入要因例
・価格
・機能
・地理(近さ)
・時間(緊急度、タイミング)
・購入が簡単
一つの商品を使い続けていても、これらの要因を他社商品が上回ってくると、どんどんリピートされなくなっていきます。
そのため、これらの要因を他社に超えられても、自社商品を選んでもらうためには「好き」という「心理的ロイヤルティ」が重要となります。すべての顧客に「好き」という指標が紐づいていれば良いですが、実際はアンケートで取得した一部のユーザーにしか紐づいていないことが多いです。
そのため「成果指標以外の顧客の行動量」を好きの度合を図る手段として活用します。
例えば 「Webサイトに毎月訪れている」「メルマガなどの通知に月n回以上反応している」などです。こうすることで、好きの度合を推計しやすい環境を作ることができます。
このように「心理的ロイヤルティ、アクティブ性」も顧客分類に活用することで、顧客セグメント間の転換を促進するためのコミュニケーションや施策を行いやすくします。
顧客の心理的ロイヤルティとアクティブ性を図る指標
「心理的ロイヤルティ、アクティブ性」を計測管理するためには、自社サービスにおいて「顧客がこの行動をしていると、自社(ブランド)を好きなのではないか、興味があるのではないか」と思える指標があっています。
具体的な指標のつくり方はサービス業態によって違いますが、Webサイトやアプリに直近で訪れているか、n回以上訪れているかというアクセス頻度は指標としてどの業態でも柔軟に使用できます。Webサイトやアプリは様々なマーケティング施策の受け皿になることが多いため、顧客がコミュニケーションに反応してくれているか?など指標に組み込みやすいです。その他ではメルマガを毎月開封していたり、ブランドメッセージが詰まったページを見ているといった売上とは関係ない各種行動量をまとめたり、閾値を決めて分けたりする手法もあります。また調査データなどをもとに収集した「ブランドロイヤルティ」を目的変数に、回帰分析し要因となるデータ項目を設定する手法もあります。
- 心理的ロイヤルティ、アクティブ性の指標例
・Webサイトやアプリに直近n回以上訪れているかというアクセス頻度
・メルマガを毎月開封
・ブランドメッセージが詰まったページを見ている
・SNSフォロー
とはいえ、これは一概に決めきれる指標ではないため、顧客を起点に「ブランドを好きでいてくれたらこんな行動してくれるのではないか」という仮説や、実際の優良顧客の行動を見ていく中で気づくことも出てくるでしょう。
ばらばらだった各種データを統合することで、自社のやるべき方向性が決まりやすくなります。
まずは顧客を知る。CDPのデータを活用したCRMに向けて
顧客セグメントで 「自分たちの顧客はどのような顧客分類に分かれるのか?」を定義することで「自分たちにはどのような顧客がいるのか?」と顧客の解像度が上がり「自分たちの顧客はどうやって次のステージに来てくれるのか?」とより具体的な施策に落とし込むことがしやすくなります。
顧客がより鮮明になり、鮮明になることでやるべきことがより具体化されるというのが、CDPの統合データを活用したCRMに向けた第一歩になります。
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この記事を書いた人
- 小畑 陽一
- 株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)
music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)
データ分析や基盤構築、プロダクトの活用などについて、貴社の状況と目的に合わせて幅広くご提案します。
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