ロイヤル顧客への転換、維持、LTV最大化、休眠復活。フェーズ毎の施策立案の考え方
この記事では「ロイヤル顧客への転換」「ロイヤル顧客の維持・LTV最大化」「休眠顧客の復活」 について施策立案時の考え方や実際の施策例について書いています。
目次
ロイヤル顧客へ転換させる施策立案の考え方
「ロイヤル顧客への転換」は、リピート顧客→ロイヤル顧客への転換を指しています。売上に加えて心理的ロイヤルティも併せ持っている顧客こそ「目指すべきロイヤル顧客」になります。※ロイヤル顧客に関するお話しはこちらの記事も合わせてご覧ください。(顧客セグメント(顧客分類)とロイヤルティの考え方)
顧客が商品を選ぶ理由において、価格や機能、地理的(近さ)、時間的(緊急度、タイミング)要因がありますが、「好き」といったポジティブな「心理的ロイヤルティ」も自社商品を選んでもらう上で欠かせない要素になります。
- 顧客が商品を選ぶ理由
・価格
・機能
・地理的要因(近さ)
・時間的要因(緊急度、タイミング)
・心理的ロイヤルティ
「心理的ロイヤルティ」を高めるためには、必ずしも商品の良さだけではなく「ブランドへの満足感・共感」も含ます。では、ブランドへの満足感とは何を指すのでしょう?ここでの満足感とは「ブランドと接触する体験において満足すること」のことを指します。
ブランドと接触する体験はオンラインとオフラインのどちらにも存在します。例えば、オンラインではWebやアプリ、メルマガ、LINEといった場があります。各顧客との接点において、顧客を理解し最適なコミュニケーションを行うことは顧客満足を促進することにつながります。現代では、様々な接触ポイントが存在するため、各顧客にとって満足感を考える上では、属性データと行動データを統合管理して顧客理解を促進させていくことが求められます。
上図のような体験を連続させていくと、顧客側が“このブランドなら探したり、購入するのが楽!”という「便利さ」だけでなく、“このブランドなら自分に合ったものが探せる!”といった「信頼感・満足感」も得られるようになり、ロイヤル顧客への転換の道を歩みやすくなります。途切れ途切れの単発施策だけはでなく、連続で満足してもらえるような顧客体験を向上させる施策が必要となります。
ロイヤル顧客の維持・LTV最大化に向けた施策立案の考え方
「ロイヤル顧客を維持し、LTV最大化を目指すには、いかに継続してもらえるか?という共通点で施策を考えていきます。ここではロイヤル化した顧客の継続を中心に説明していきます。
ここでも、連続した顧客体験の満足をつくり上げることが重要になります。前段のロイヤル顧客への転換との違いは、満足感だけでなく「特別感、プレミアム感」を感じてもらうことが重要となります。
ポイントやマイレージ等に代表されるロイヤルティプログラムでは、顧客ステータスの明示やステータスごとへの報酬を用意することで「特別感、プレミアム感」を提供しています。仮に、ロイヤルティプログラムがない場合でも、売り上げ上位を占める顧客や定期的な購入がある顧客などを、統合データから分析し、顧客クラスターとすることで施策でのコミュニケーションは可能になります。
きちんと「あなたは自社にとって特別な顧客です!」と伝えることが、特別感を得てもらう上で重要であり「感謝を込めた特別優待です!」と気持ちを形にして伝えることが、ロイヤル顧客のさらなる満足感を高める一つとなっていきます。
ロイヤルティが高い顧客は「ともに創り上げる」という感覚を持ち合わせていることも多いです。イベントなどでファンを集め、試作品をレビューしてもらったり、ファン同士が集まり議論する場をつくることもマーケティング施策の一つになります。ファンコミュニティに代表される共感・共創・応援といった「特別な関係性」を生み出す施策(場づくり)に積極的に取り組むことも有効です。
- 施策例
・ロイヤル顧客へのDM/シークレットキャンペーン
・ファンイベント
・ファンコミュニティ運営
休眠顧客の復活に向けた施策立案の考え方
過去に購入経験はあるが、その後一定期間購入がない「休眠顧客」に、再びアクティブな顧客に転換してもらいたい。休眠顧客の掘り起こしは、新規顧客獲得コストよりも少なく済むことも多く、売り上げ(利益)に対するインパクトも大きくなることが多いので、企業によっては新規顧客の獲得よりも休眠顧客の復活を優先度高く取り組んでいる場合もあります。
ビジネスを長く続けている企業ほど、休眠顧客が多く存在している可能性は高いため、マーケティング対象として大きなポテンシャルを秘めています。休眠顧客を効率よく掘り起こすためには「顧客の休眠理由を把握」+「顧客に合わせたコミュニケーション」を行うことが必要です。
休眠顧客は、以前自社の商品(サービス)を購入しているため「一定の関心はある(あった)顧客」と言えます。休眠前にはどんな商品を購入していたかなど、休眠以前の行動を把握し、何がきっかけで休眠に至ったのか推測します。
例えば、休眠理由を把握するために、休眠理由を回答してもらうアンケートを送ることもできるでしょう。とはいえ、単純にアンケートを送っても、有効な回答はほとんど得られないかもしれません。そこで、以前はたくさん購入してくれていた人に絞ってアンケートを送り、回答者にはインセンティブを与えるなどの施策で顧客の回答率を高めるなどの工夫も必要になります。
アンケートを回答してもらうだけではなく「新しい商品の〇〇という機能は知っているか・使ってみたいか」といった設問を用意することで、商品理解を促し、購買につながることも期待できます。以前は「どんな商品を購入してくれたか」「何回購入し、いくら使ってくれたか」などのデータから、顧客の関心はどこにあったのか?またその関心の度合いはどのくらい高かったのか?を推測できるかもしれません。
いずれにせよ、それらの分析データをもとに、過去購買していた商品と類似する最新の人気商品をレコメンドしたり、過去に購入していた商品を再び購入してもらうために限定クーポンを発行するなど、顧客の関心に合わせてアプローチすることで休眠復活の確率を高めることが重要となります。
休眠顧客がサイトに戻ってきていないのであれば、ターゲティング広告やメールなどでアプローチするなど、施策の幅は狭まりますが、一方で、サイトに時折戻ってきているものの購入に至っていないのであれば、サイトでの商品閲覧状況なども含めていまの顧客の関心をとらえてアプローチすることが効果的になっていきます。
また、顧客が休眠に転換(離反)した理由が、サービスに対して不満を感じたことだった場合。サービスを改善しない限り顧客は戻ってきてはくれないいかもしれません。ですが、もし顧客の不満を改善できたのならば、その事実を顧客に向けて発信することで、顧客は「ちゃんと不満の声を聞いてくれて改善してくれる企業なんだ」と、商品やサービスの利用を再び検討してくれるきっかけになるかもしれません。
- 施策例
・以前たくさん購入してくれていた人に絞ってアンケートを送り、回答者にはインセンティブを与える
・休眠する前に購買していた商品と関連する人気商品をレコメンドする
・休眠する前に購買していた商品に利用できるクーポンを配信する
・休眠顧客の現在の接触メディアに合わせてアプローチを変える
・サービスや商品を改善したのならその事実を顧客に届ける
ここまで「顧客のロイヤル化」→「ロイヤル顧客の維持」「休眠顧客の復活」と、顧客の次のフェーズへの「転換」に着目し、それぞれの施策を説明してきました。各フェーズごとに「施策を考える軸」が異なるというのが大事なポイントになります。
この記事を書いた人
- 小畑 陽一
- 株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)
music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)
データ分析や基盤構築、プロダクトの活用などについて、貴社の状況と目的に合わせて幅広くご提案します。
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