データの可視化は何の役に立つのか?|目的別ダッシュボードの使い道
この記事では、BIダッシュボード等によるデータの可視化の主な目的とその使い道について書いています。
当社UNCOVER TRUTHでは、BIダッシュボード作成やデータの可視化についてご相談をいただくことがあります。
BIダッシュボードでデータを可視化すれば、事業の羅針盤ができる!と意気込んではみたものの、あまり活用方針が定まらず、そもそも何を見るべきか、どう活かしていくべきか、要件定義に四苦八苦する例も珍しいことではありません。
このような状態にならないためにも、データを可視化する際には、データから示唆を得て、どのようなアクションを取るのか?といった目的を定めることが、まずは重要となります。一般的に、BIツール等を用いてデータを可視化する目的は大きく分けると2つあります。
- 目的①:経営層、事業責任者層が意思決定をするため。経営方針や事業方針を決めるため。
- 目的②:実行チーム、メンバーが施策実行をするため。日々の施策を改善するため。
それでは2つの目的について詳しく見ていきましょう。(ちなみに本記事の内容は事業会社の諸先輩方に色々教わりました。この場を借りて感謝申し上げます)
目次
経営層、事業責任者層が意思決定をするため
これが世にいう「羅針盤」と意図が近いもので、経営層や事業責任者が手にすべき「マクロ視点」を支援するものです。
自社が注力すべきマーケットやターゲットを見定め、大きな投資判断=意思決定を行うためにデータを活用するというものです。このレイヤーの方々の投資判断はヒト モノ カネに関わるため、大局観を確認できるダッシュボードが必要です。
どのようなデータを見るのか?
業態や商材により多少変わりますが、およそ3ヵ年程度のデータを利用します。大局的な動態把握をするために販売データ、会員データ、商品データなどの経年レベルでの傾向を見ていきます。例えば、以下のような項目の可視化による傾向把握が代表的です。
顧客特性 | 属性(性別/年代/エリア)、RFM、顧客ランク転換など |
商品特性 | 商品カテゴリ、商品のディティール(色やシリーズなど)、商品の容量、パッケージなど |
販促特性 | 広告チャネル、販売チャネル別売れ行き及び商品、店頭/EC併用率など |
どう活用するのか?
これらのデータをモニタリングすることで、傾向変化を読み取り、仮説創出や戦略立案に活用します。(もちろん一般的な市場動向、競合調査、消費変化などマクロ的観点の情報や、自社の資源であるヒトモノカネを十分に加味していることが前提です)
主に中期計画、年度戦略、半期/四半期ごとの予算配分(アロケーション)の意思決定に用います。
商品仕入れ(MD)、新規顧客獲得方針(広告戦略)、顧客コミュニケーション(CRM戦略)、ECと店舗の役割分担や連携方針など、大きな方針を意思決定する際に、鳥瞰視点でデータを根拠のひとつとして活用するイメージです。また、前年度や当年度の戦略で立てた仮説と照らし合わせ、想定外(ネガティブもポジティブも)な動きがないかも確認し、スポット的に深掘りの分析をすることも必要になります。仮説が外れた原因が見つかれば、有効な手を打てるというわけです。
この場合のダッシュボード=事業運営における羅針盤となります。木を見て森を見ずにならないよう、大局から状態把握するためのデータ活用です。データが豊富に取得できるようになったからこそ、経営層や事業責任者にとってますますの活用が期待される領域です。
実行メンバー、実行チームが施策実行をするため
デジタルの領域での施策実行は、この数年で非常に成長した分野だと考えています。個別の施策ツールでもJavaScriptのタグを仕込むだけで、Webサイト内のユーザー行動データをかなりの量、取得できるようになりました。PLAID社のKARTEなどはその代表的なツールでしょう。
Google社が数年前より提唱している「マイクロモーメント」などが非常に示唆に富んでいると思います。スマホの普及で生活者の「今」を知ることが容易になりました。詳しくはコチラ(※Googleへの外部リンクです)
どのようなデータを見るのか?
日々の施策を実行する担当者にとって必要なデータは、前段の経営者向けのダッシュボードにあるような傾向把握を目的としたデータではありません。顧客の心が動く”瞬間”を捉える「ミクロ視点」を支援する必要があります。
「この行動を取る顧客は比較検討段階である」とか「あともう一押しで購入に至るであろう」など、今この瞬間の顧客の心理状態を理解するためにデータを活用することで、施策の効果を飛躍的に向上させられる可能性があります。
つまり、実行担当者にとって必要なデータは「アクション(施策)」を捻り出すためにあります。具体的なアクションに結び付けられないデータ抽出やデータ分析はリソースの消耗に直結するので、常に「このデータはアクションに結びつけられるのか?」と注意をする必要があります。
例えば、以下のような項目を可視化することによる状態把握が代表的です。
セグメント分析 | 購買ファネル(ジャーニー型)分類、RFM顧客分類、購買チャネル別分類など |
マジックナンバー分析 | 購買回数と購入間隔期間の相関分析、サイト訪問の頻度や期間と購買の相関分析、コンテンツの閲覧件数と購買の相関分析など |
差分 / 特徴分析 | F1止まりとF2転換者の行動特徴差分、高LTV顧客のデジタル行動特徴など |
態度変容分析 | 特定機能利用と購買ファネルの相関分析(お気に入り登録、絞込み検索など)、コンテンツ閲覧と購入意向度の相関分析など |
これらの顧客特徴理解や、短期的に発生する顧客のモーメント(具体的アクション)が購買 / 登録 / 応募の意向度にどのように結びつくのかを理解するためのデータ活用は非常に有効です。ある特定の閾値に達する行動が発生した顧客に対して、接客施策やメール施策などあらゆる手段でアプローチ(アクション)を実施するアイデアを生み出すことが可能になります。
どう活用するのか?
日々トライアンドエラーを繰り返すPDCAにおいて、顧客の行動データを活用することで暗中模索から抜け出すことができます。施策の根拠となるデータがあることで、自信に満ちた仮説を創出することが容易になることはもちろんのこと、データを根拠に施策を立案するからこそ、失策に終わっても原因を振り返ることができます。
結果として、明日以降に「やるべきこと」と「やらない方がいいこと」の取捨選択が明確になります。日常的に施策の評価と施策の断捨離ができることで、実行チームが活性化することは容易に想像できるでしょう。
ここまでは、デジタル上で起きるデータを元にした例を挙げました。ですが、昨今ではオフラインのデータも統合して活用できるようになりました。統合データ環境(DWHやCDP)を所有する事業者であれば、デジタル行動と店舗購買の相関性を分析することも可能になります。
例えば、下記のような顧客Aの行動履歴があるとします。
- この数年間にわたり店舗でしか買わない
- かつ店舗購買直前にECサイトで商品を閲覧(物色)
この場合、ECサイトでの商品閲覧行動は、顧客Aにとっては店舗に買い物に行く前の予兆行動(モーメント)になります。
この顧客Aに対して、しつこくECでのコンバージョンを促すオファーを出し続けるよりも、店舗取置きサービスへの誘導や、店頭イベントなどのコンテンツを提供する方が顧客満足度も上がり購買活性化につながることも想像に難くないでしょう。
日々の施策を実行する担当者にとっても、データ活用の重要性は日増しに高まっています。スポット的な分析でも十分な顧客理解が得られれば、施策の高度化に繋げられると思います。これに加えて、施策の振り返りなど、実行結果をチームで共有してPDCAを運用するためには、定点的に観測できるダッシュボードやチャートの仕組み化(自動抽出/自動生成)があれば非常に有効となります。
日次や週次で更新されるようなレポーティングの自動化が行われれば、報告書の作業に追われることなく、施策に集中して価値を効率的に生み出すことも可能となります。施策実行者にとってのデータの可視化は、顧客理解(モーメント)と、PDCAレポートの自動化が重点ポイントになります。
以上の通り、職務のレイヤーによって可視化するデータとその活用目的は異なり、それぞれのレイヤーによって効果的なデータ活用があります。
経営層や事業責任者層には意思決定に必要な「マクロ視点」の傾向データ。実行担当者やチーム層には施策立案とPDCAに必要な「ミクロ視点」の顧客行動データや施策の結果データ。それぞれのレイヤーに合わせて目的を定義して「データを可視化」し、データを活用していくことが事業推進に役立てられることが伝わったでしょうか?
本記事の質問(議題)にある通り「データの可視化が何の役に立つのか?」について回答してみました。少しでもお役に立てることを願います。ここまでお読みいただきありがとうございました。
この記事を書いた人
- 小畑 陽一
- 株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)
music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)
データ分析や基盤構築、プロダクトの活用などについて、貴社の状況と目的に合わせて幅広くご提案します。
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