DX推進で商品価値だけでなく、定性的な顧客体験も提供するコメ兵(前編)
近年、日本国内でも「OMO」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)」といった言葉が広く浸透し始めました。
実店舗・EC・アプリなど様々なチャネルで企業とつながる顧客をどのように捉え、寄り添っていけばいいのか各企業単位でのアクションが求められています。
そのような中でマーケターはどのように対応していけばいいのでしょうか?
今回は、株式会社コメ兵の諏訪さんにお話を伺いました。
諏訪 弘樹 氏
株式会社コメ兵
ゼネラルアドバイザー
新卒で入社、ブランドバッグの専門部署にて、セールスやバイイングを経験、2010年に社内のWeb事業室立ち上げスタッフとしてCRM、Web広告などのダイレクトマーケティングを担当、その後リアルの店舗開発を経験、現在はマーケティング部にてWebマーケティングの統括、全社OMOやOne to Oneの取組み、新しい店舗形態の創造に対しての実務、アドバイザーやサポートを行なっている。
店舗とオンラインストアにて中古品、新品の買取りと販売を行う株式会社コメ兵が、DXをどのように考え推進しているのか、ぜひご一読いただければと思います。
目次
■店舗とWebは別ではなく、繋がっている
ーーまずは諏訪さんの経歴を聞かせてください。
私は新卒でコメ兵に入社し、最初は現場担当として店頭でブランドバッグを中心とする商品の販売や買取りを行っていました。自分が仕入れた商品が違うお客様に渡っていく様子を直に見られるのは面白かったですね。「この商品はどんな人から買い取った」ということを覚えているので、その商品を売るときにも思いを込めていました。
ーー中古品の買取りや販売は、信頼感が大事になりますよね。買取りを担当した方から商品を購入できると、お客様側も安心できると思います。現場を経験した後の経歴を教えてください。
現場を3〜4年経験した後は、Web事業室立ち上げスタッフとしてCRM、Web広告などのダイレクトマーケティングを担当。その後リアル店舗の店舗開発担当を経て、現在はマーケティング部にてWebマーケティングの統括などを行っています。
ーー店舗での経験があるので、Webの担当になっても、現場のオペレーションや数字のイメージがきちんと湧きそうですね。
今は現場から離れていますが、昨年の冬、久しぶりに店舗に立つ機会がありました。繁忙期ということもあり、1日で数十人のお客様を接客したのですが、「ネットでこの商品を見て来ました」というお客様が半数以上で。私が新卒入社して店舗にいたときは、そんなことありませんでしたが、今の時代は店舗とWebが別々ではなく、繋がっていることを実感しました。
これまでは店舗とWebそれぞれの売上実績しか見ていなくて、お客様の行動を見ていないことにも気づきました。
ーーありがとうございます。お客様の行動分析をすることがマーケティング課題の解決などにもつながりますよね。
売上実績だけだと、お客様がご購入に至るまでの文脈や導線がわからないため、どうしても実績の評価のためのデータとなってしまいます。お客様を正しく理解するため、お客様の行動を分析することが、本質的なマーケティング施策に繋がると考えています。購買データは分析できていますので、今後は行動データも組み合わせた分析を進めていく予定です。
今回UNCOVER TRUTHさんとご一緒するきっかけにも繋がるのですが、LTV向上のために顧客理解の重要性も感じていました。
ーー現状、コメ兵さんはWebよりも店舗の方が売り上げが多いと伺っています。諏訪さんはWebマーケティング担当ですが、これまでの現場での経験がWebにも活かせそうですね。どうしても、現場経験がないと販売までの導線をイメージしづらいというか。
そうですね。マーケティング部のスタッフには、商材ごとに現場経験がある人が在籍しています。もっと現場の情報をデータに落とし込んで、店舗とWeb双方の売り上げにつなげていきたいところです。
■お客様のオンライン・オフラインの行動をデータで捉えたい
ーー弊社にご相談いただいた際、どのような点を課題に感じていらっしゃったのでしょうか?
元々Webサイトの行動データは溜まっていたのですが、有効活用出来ていませんでした。また、顧客ランクはありましたが店舗の実績中心で作られているものだったので、Web側のデータとうまく連携が出来ていませんでした。そのため、こんな施策をやってこれだけ売上が上がっているというデータは出るのですが、店舗を中心にご利用いただいているお客様しか顧客の状況に合わせたCRMが出来ていませんでした。
ーーWebで出した施策がWebでの売り上げに繋がるのはわかりやすいですが、間接的に店舗での売り上げに繋がっている可能性もありますよね。しかも、きちんとデータが繋がっていないとWebの関与売上(間接貢献)が5%なのか20%なのかもわからない。
そのとおりです。先ほども話したように、店舗に来てくださるお客様の約半数がWebをご覧になっているので、Webの施策が店舗に大きな影響を与えていることは間違いありません。ただ、実際にはどのくらいの割合なのか、どのくらいの売上に繋がっているのかが数値化できていない状況です。定期的に行っている顧客理解を目的とした分析や不定期で実施する顧客アンケートをみると、ロイヤルのお客様ほどWebをご覧になっていることはわかっています。
しかし実際には、会社の中で取り扱えるデータがバラバラになっていて、本来お客様の半分がWebを見てきてくれているという状況を捉えられないので、OMOの観点を取り入れた新しい顧客ランクの必要性を感じました。
ーー中古品という一点物を取り扱っているからこそ、Webまで隈なくチェックしてくださっているんでしょうね。
通常はあまり目にすることのない商品もありますし、Webサイトが更新されるタイミングを狙ってサイトを訪問される方もいらっしゃいます。
■商品以外の定性的な顧客体験も意識
ーー他に社内で課題を感じている部分や検討していることはありますか?
定量的なことはデータの分析や活用でわかりますが、「定性的な顧客体験は何を提供できているのか」を考えています。新規のお客様やライトなお客様は、コメ兵で取り扱っている商品に価値を感じていただいていると思います。ですが、ある程度顧客体験を積んでいただいたお客様には、商品以外でもコメ兵に何かしらの価値を感じていただいているのではないかと思うんです。
それが何なのかというと、特定のものではなく、セレンディピティ(偶然性)だったり、商品をきっかけに懐かしさを感じたりと、いろんな要素があると思っています。
ーー確かに、「昔憧れていた商品」や「集めていたブランド」などの商品を見ているだけで青春を思い出すこともありますよね。それもコメ兵の楽しみ方のひとつですね。その商品が購入されずとも、定期的にサイトを訪れるきっかけになりそうです。
中には、Webに掲載している商品を何百点とお気に入り登録してくださっているお客様もいるんです。お気に入りに入れている全ての商品を買ってくれるのかというとそうではないのですが、その背景を予測すると、商品を見る楽しみもあるのかなと思っています。
ーーお気に入りの裏側には商品への思い入れがあるのかもしれないですね。その中から選んだものを、店舗に買いに来る可能性もありますし。
そうですね。コメ兵は買取りと販売の両方を行っているビジネスモデルなので、データの分析は難しいって言われてきたのですが、今回UNCOVER TRUTHさんにデータの基盤作りや分析をしていただけることになって、すごく助かってます。基盤を作って終わりではなく、しっかりと伴走していただけているのもありがたいですね。
後編はこちらからご覧ください。別記事:DX推進で商品価値だけでなく、定性的な顧客体験も提供するコメ兵(後編)