BLOG

ブログ

3rd Party Cookie終焉に見るCDP(1st Party Data)の未来|CDP専門書籍の著者COO小畑が解説!

2023年11月、Google社からChromeブラウザでも3rd Party Cookie(サードパーティ・クッキー)が利用できなくなるというニュースが出て、いよいよだなと焦る気持ちが日増しに高まっています。

Chromeでは2024年7月から順次3rd Party Cookieの取得ができなくなります。ブラウザのシェアでは約47%となるChromeですから極めて大きな影響となり、すでに3rd Party Cookieを廃止済みのSafari(約37%)と合わせると、大半のブラウザ(=アノニマスユーザー)が追跡できなくなるということです。

この記事では、3rd Party Cookieについて改めて何ができるのか?その3rd Party Cookieの利用規制があることでビジネスにどんな影響が及ぼされるのか?そしてその対策は?と順番に話を進めてみたいと思います。

フジテレビが公式で提供する「シゴトズキ」に弊社COOの小畑が出演いたしました。こちらでも3rd Party Cookieについてわかりやすく解説していますので、併せてご覧ください。

CDP(1st Party Data)の前に3rd Party Cookieについておさらい

特にデジタル広告の世界では3rd Party Cookieの規制により甚大なインパクトが想定されています。改めてCookieの仕組みから見ていきましょう。

Cookieとは?
・サイトを訪れた「ユーザーに関する情報」をブラウザに保存する仕組み

1st Party Cookie
・アクセスした自社ドメインが発行するCookieで、サイト内の行動履歴のみを記録できる

3rd Party Cookie
・アクセスしたサイトと異なるドメインが発行するCookieで、複数サイト横断して行動履歴を記録することができる
・広告主や分析サービスプロバイダーなどがユーザーの行動データを収集し、広告のターゲティングやウェブサイト改善のために利用する「ユーザーに関する情報」を保存する仕組み

3rd Party Cookie発行と利用の流れ(図解)

CDPに関わるCookieの受け渡し構図
3rd Party Cookie発行と利用の流れ

上図の通り、適切な広告をユーザーに届けるという意味においては非常に有用な仕組みが3rd Party Cookieだと言えます。広告主側からすると、自社のサイトに訪れて商品やサービスに興味を持ってくれたユーザーを、別サイトやSNSでも追跡ができ、該当ユーザーにピンポイントで広告を配信することができるので、広告の効率も高めることができます。

1990年代から活用の進化を遂げてきた3rd Party Cookieは、なぜここにきて規制が強化されるのでしょうか?それは、「ユーザー行動を複数社にまたいで追跡するのは、個人のプライバシー侵害ではないのか?」という論点がスタート地点です。現在では法規制とブラウザ規制の2軸で対応が進められています。ご参考までに公開情報を置いておきます。

日本での法改正

【2022年4月】改正個人情報保護法:Cookieは個人関連情報である(個人情報に該当しない) 第三者に提供し、個人情報と紐付ける場合に本人同意が必要

引用元:個人情報保護委員会 改正法に関連するガイドライン等の整備に向けた論点について
(個人関連情報)https://www.ppc.go.jp/files/pdf/210407_shiryou-4.pdf

【2023年6月】改正電気通信事業法:対象はメッセージ媒介・SNS・検索・ニュースサイト・まとめサイト等各種情報のオンライン提供(企業HP・ECサイト・個人ブログ等は対象外)対象サイトは「事実の通知」「事前同意」「オプトアウト機会」を提供し、公表するべき事実は「送信される情報」「取り扱う企業や氏名」「利用目的」の3つ。

引用元:総務省 外部送信規律について https://www.soumu.go.jp/main_content/000862755.pdf

3rd Party Cookie規制によるビジネスインパクト

さて、ここまでは3rd Party Cookieについておさらいをしてきました。以降はビジネス現場における影響について見ていきましょう。3rd Party Cookie規制により影響があることは簡単に整理すると以下の通りです。

【影響あり】
・リターゲティング広告の実施不可
・広告等のコンバージョン計測やアトリビューション(間接効果)の計測精度低下
つまり分析難易度が上がる、評価の精度が下がる

【影響なし】
・アクセス解析ツール(Google Analytics等)の計測
・GA4のオーディエンスを元に広告配信が可能
・自社サイト及び自社データを利用した行動情報に基づく、情報発信

サクッと書きましたが、これは結構恐ろしいことです。前段でも触れた通り「自社のサイトに訪れて商品やサービスに興味を持ってくれたユーザーを、別サイトやSNSでも追跡ができ、該当ユーザーにピンポイントで広告を配信することができる」このリターゲティング広告は読者の皆さまも普段から経験していることだと思います。一度購入を検討して調べていた商品があっても、サイトから離脱して忘れてた時に、SNSのフィードなどで目に入ると「そうそう、欲しかったんだ」とポチッと買い物する時ってありますよね。これ、できなくなります。

広告のコンバージョン計測も重要ですよね。広告主であれば広告の効果を計測して広告予算を最適化するお仕事をされている経験がある方も多いと思います。アトリビューションの計測もとても大事です。検討期間がそこそこ長い商品だと、何度か広告に触れてもらって比較検討を重ねて購入いただくような場合があると思います。どんな媒体でどんな広告クリエイティブがユーザーの態度変容を促したのか?、広告も含めた顧客接点を最適化していくためには欠かせない情報です。

広告は事業運営の中でも大きなウェイトを占める予算です。計測して評価をして改善するPDCA活動が立ち行かなくなることを想像すると非常に恐ろしくなります。読者の皆さまもビジネスに与えるインパクトを想定するきっかけになれたらと思います。広告予算を頭に思い浮かべながら、今かけているリタゲ広告や間接効果を狙った配信回数のコントロールができなくなることを想像するといかがでしょう?ユーザーの獲得数への影響や、広告による顧客獲得単価の高騰など、いくつも心配事が出てくるかもしれません。

広告配信側が推進している対策

もちろん、ただ指を咥えてデジタル広告の終焉を待っているだけではありません。広告面を持つメディアやSNSプラットフォーマーも対策を進めています。代表的な例をご紹介します。3rd Party Cookieが利用できなくなることで精度は落ちてしまいますが、手段がなくなるわけではありません。

3rd Party Cookie規制への代表的な対策例

  • プライバシーサンドボックス(Google提供)
  • Facebook広告API(広告主からFacebookサーバーへのイベント送信)
  • コンテキスト広告・インテント広告などの利活用(GumGumターゲティング・Integral Ad Science等)
  • 1st Party Cookieを利用したサイト内でのレコメンドや広告配信
  • 自社データを収集した上での、ユーザーコミュニケーション

これらの対策を活用することで、現在の施策の代替案を実践研究していかなければなりません。紙幅の問題ですべては解説できませんので、Google社が提唱するプライバシーサンドボックスをピックアップして見たいと思います。

これからの時代は「Cookieレス」となるため、個のユーザーを特定できなくなることを前提としている仕組みです。平たくいうと「似たようなブラウジング習慣を持つブラウザをグループ(コホート)化するための仕組み」(平たくないような気もしますが。。。)

プライバシーサンドボックスのコホートグループのイメージ図

CDPを使ったターゲティングの未来
プライバシーサンドボックスのコホートグループのイメージ図

ブラウジング習慣の似たもの同士をグループ化し、直近の閲覧履歴が似ているグループに「興味コホート」を割り当てます。たとえば「車興味ありグループ」「住宅興味ありグループ」という割り当てを行います。Cookie=Aさんが車に興味あると特定できませんが、車に興味ありグループのユーザーという割り当てはされます。

というように、あくまで個人情報を保護するユーザー視点で設計されている仕組みになりますので、今まで利用した3rd Party Cookieのように広告活用において確実性の高いソリューションとはなりません。そこでCDPを構築し「1st Party Cookie / Data」を利用することがより重要性を増してきたということになります。つまり、1st Party Cookieで取得できるデータ、および自社データの重要性が極めて高まったことを示しています。

CDP(1st Party Data)の活用準備と狙い

ようやくタイトルにあるCDPと関連する話に辿り着きました。長文にお付き合いいただき本当にありがとうございます。まずは全体像をみていきましょう。下図は一般的なCDPを中心においた、データ活用基盤の構成図です。

データ活用基盤全体構成図

CDPの構造図
データ活用基盤全体構成図

1st Party Cookie
・アクセスした自社ドメインが発行するCookieで、サイト内の行動履歴
・自社サイトに来訪したユーザーの特定キー(記録)はこれから先も利用できる

1st Party Data
・Cookieを含めた自社が独自に保有する顧客データの総称
  ・店舗やECで会員登録した際に得た個人情報
  ・店舗やECで商品を購入した際に発生する購買履歴情報
  ・自社サイトやアプリ内の閲覧履歴等の行動データ

これらの1st Party DataをCDPなどのデータベースに統合することで、上図の右側にある分析 / 広告 / CRM / MAなどに活用をすることができます。

当然ながらこれら取得データの利用には本人の同意が必要になります。以下のキャプチャ画面は弊社のサイトになります。画面の下に「本人同意」のための承認を求めており、同意したユーザーのデータのみを広告や分析に利活用できます。(一般には「同意管理」という)

同意管理(パーミッション)の実装例

UNCOVER TRUTHのサイトの同意実装例

ここまで準備ができたら1st Party Dataの活用についてみていきましょう。

CDP(1st Party Data)を活用することでの突破口

3rd Party Cookieでできたこと、規制によりできなくなること(リタゲなど)、各種対策をみてきました。1st Party Dataを活用することでここまで挙げてきた課題を突破する方法論があります。一番最初に知っておくべきことは、Google広告への1st Party Data利用でしょうか。

CDPの構造図2
1st Party Dataを利用したリタゲ広告の例



自社の保有する顧客データ(メアドなど)をGoogleに渡すことで、リストの対象者に対して広告が配信できます。つまり、3rd Party Cookieの制限でできなくなるといったリタゲ広告の代替ができます。あえて1st Party Dataと記載した理由は、決してECサイトで取得したデジタルのデータだけでなく、店頭の会員加入で取得したメールアドレスなどでも活用できるという利点があります。

当然ながら、Googleに渡すデータは個人情報に該当するデータなので、ハッシュ化などの処理をして暗号化し秘匿性を高め安全に運用することが求められます。前段で述べたようにユーザーの承諾(同意管理)が得られていることが前提となります。

CDP(1st Party Data)を活用する仕組みの全体構成図

CDPの構造図3
1st Party Dataを活用する仕組みの全体構成図

上図のように、1st Party Dataを安全かつ機動的に広告活用する際に必要となる全体構成です。企業としてはCDPを導入することで、GoogleやMETAやYahooなどの広告プラットフォームやAdネットワークなどを活用することができるようになります。CDPの構築とデータ収集を行うことで、分析と施策の精度を高めることができます。また、今後の出稿形式に合わせたデータ提供を各プラットフォームへ連携できるように備えることができます。

まとめ

今年2024年の夏ごろには3rd Party Cookieの制限による影響が一気に噴出することでしょう。それまでに会社としてどのように対処していくべきなのか?その方針を決めることは大切です。もちろんですが、CDPなどデータ活用環境の最低限の備えは必要です。ご参考までに、社内で議論するべきアジェンダ例をお伝えし、本記事は終わりにしたいと思います。

3rd Party Cookie規制対策について社内で議論すべきアジェンダ例

  • ターゲティング配信が限定されること/精度低下によるインパクト
  • 広告効果測定の精度が下がることによるインパクト
  • 上記に備えた、代替策の検討(Owned Media,Earned Media,Paid Mediaの選定)
  • 検証をするための情報収集とテストを誰が行うのか(技術面・運用面)
  • 1st Party Data取得のためにできる取り組みの再洗い出し
  • 取得したデータをどのようにまとめ、活用するのか(データ収集・分析・施策の体制)

まずは自社がどの程度3rd Party Cookieの技術を利用した広告に依存しているか確認してみてください。顧客獲得をしている広告手法が3rd Party Cookieの影響を受ける場合、緊急性は増してしまいます。広告で顧客を取れなくなってからでは遅いです。この記事が検討と対応を実施いただく一助となれば幸いです。

お役立ち資料をダウンロード『CDP導入にはいくらかかる?

1to1マーケティング、OMO施策など、顧客体験を向上させるためにCDPの導入を検討されているケースをよくお見受けします。当社でも日ごろからCDP関連のご相談やご質問を多くいただいておりますが、中でも費用に関するご質問を大変多くいただきます。本資料では、これまでの当社の経験を元にした、DXプロジェクトを推進する上で知っておきたい「CDPの導入にかかる費用」についてまとめています。


この記事を書いた人

小畑 陽一
株式会社UNCOVER TRUTH
取締役COO(Chief Operating Officer)

music.jpやルナルナを手がけるエムティーアイ社出身。ソリューション事業責任者として、大手企業向けモバイルサイト構築ソリューションで、国内ナンバーワンのASPサービスを展開。2014年、取締役として株式会社UNCOVER TRUTHの取締役COOとして経営に参加。経営・事業戦略とマーケティングを管掌。 ad:tech Tokyo / Kyushu、宣伝会議、MarkeZine、Web担当者フォーラムなど講演活動多数。
著書:『ユーザー起点マーケティング実践ガイド』(CDP専門書籍)

サービスのご相談、資料請求、
お問い合わせをお待ちしております。

We are looking forward for your inquiry.

お問い合わせCONTACT US