最大の課題は「デジタルマーケティングに取り組むための組織作り」|セミナーレポート
2017年のUNCOVER TRUTHセミナー第一弾は 「お金のデザイン社の事例で学ぶ、デジタルマーケティングの推進方法」と題し、エンゲージメントプラットフォーム「Marketo」を開発提供するマルケト様と共同で開催しました。両社の共通クライアントである「お金のデザイン」様からプロダクトマネージャーの梶田氏をお迎えし、デジタルマーケティングに対する社内理解の獲得から導入後のPDCA運用についてまで、リアルなお話を伺う機会となりました。
今回はお金のデザイン様をゲストにお招きしたこともあり、金融機関様から多くの方にご参加いただいたのが印象的で、金融業界における広告宣伝費のデジタルシフトが本格化していることを改めて感じます。
-小川卓講演「PDCAの回し方 実践編」
さて第一部は恒例のUNCOVER TRUTH CAO 小川卓による講演です。小川といえば、昨年ITmediaマーケティングで連載した「小川 卓の『高速PDCA』入門」が大変なご好評をいただき、おかげさまで現在は連載第二弾となる「小川 卓の高速PDCA“超”入門」がスタートしています。こちらもぜひ読んでみてください。
今回の講演テーマももちろんPDCAです。PDCAなんて、とうの昔から回しているよ…という方も多いかと思いますが「そもそもなぜPDCAを回す必要があるのか」という質問にしっかりと答えることはできるでしょうか。このセミナーではその質問に対する答えを起点に「PDCAの回しかた 実践編 ~回らない理由と、それを解決するための実例を紹介~」と題して、PDCAが回らないボトルネックの特定と、それを解消するための方法に重点を置いてお話ししました。
-そもそもなぜPDCAを回す必要があるのか?
先ほどの「そもそもなぜPDCAを回す必要があるのか」という質問ですが、逆に言うと、この問いに対する答えを関係者全員が納得・共有していない場合、残念ながらPDCAがうまく回わらない可能性が高いと小川は指摘します。PDCAを回すべき本当の理由とは「打席数を増やし、打率を上げるため」。これまでのセミナーでも常々お伝えしている重要かつ基本的な考え方です。
その中で責任者に求められるのは、PDCAが回らない原因となっているあらゆる障害を取り除くという役割です。障害とはPlan, Do, Check, Actionのいずれかのプロセスでつまずいてしまう要因のことを指します。セミナーでは、それぞれの段階(P→D, D→C, C→A)で考えられるつまずきの理由とその対策を具体的にご紹介しました。
-最もボトルネックになりやすいのは「Check→Action」のプロセス
4つのプロセスの中でも「一番難しいかもしれない」と小川が言うのは、C→A、つまりCheckからActionにつなげるプロセスです。ここでつまずくということは、せっかく抽出した数値の変化(あるいは無変化)が意味することやその原因が分からず、施策につなげることができていないという状況で、これでは成果が出ないのも当然です。重要でありながら難しいこのプロセスにおいて、ボトルネックを解消する方法として小川は以下のような例を挙げました。
- 外部パートナーの活用
- 分析スキルの向上(勉強会等への参加)
- ヒートマップツール「USERDIVE」やABテストでの検証
- ミーティング等での確認
特に外部パートナーの活用については「組織戦略上、Web専任の人材育成にリソースをさくことができない」という企業の悩みを解決するヒントにもなるのではないでしょうか。実際、UNCOVER TRUTHがプロジェクトに携わった企業様の中でも特に高い改善結果が出たケースの共通点には「外部パートナーとの付き合い方がうまい」「プロフェッショナルへのアウトソースが効果的にできている」ということが挙げられるように思います。
-マルケト大里氏講演「LTVを高めるエンゲージメントマーケティング」
第二部ではマルケトのカスタマーサクセス部よりビジネスコンサルタントの大里紀雄氏をお迎えして「ツールに踊らされない。LTVを高めるエンゲージメントマーケティング」のテーマでお話しいただきました。昨今、一口に「マーケター」と言ってもその業務範囲が急速に拡大する中、エンゲージマーケティングへの注目度が高まっています。大里氏からはその背景に触れながら、事例に沿って具体的なマーケティングアプローチを解説していただくとともに「MAはあくまでもツールであると理解してほしい」等、MAツールを活用して成果を出すための重要なメッセージをいただきました。
-パネルディスカッション「どうやって上司を説得したらいいですか?」
第三部は、実際にヒートマップツール「USERDIVE」とMarketoを導入してデジタルマーケティングを推進した「お金のデザイン」梶田氏と3人のパネルディスカッションです。ビールを片手にざっくばらんな雰囲気の中、参加者の皆さまからリアルなお悩みを聞くことができ、主催者の私たちにとっても学びの多い時間となりました。それでは実際に上がった質問と登壇者からの回答を見ていきましょう。
まずは「デジタルマーケティングの予算配分、どうすればいいの?」というテーマです。今回多くのご参加をいただいた金融業界のように、顧客獲得単価が高い業種を中心として、広告投資だけでは次第に採算が合わなくなってくるという壁にぶつかる企業が増えています。そこで、特に先行投資メリットの大きいIT予算に関しては当然、新しいソリューションの導入という選択肢が出てくるわけですが、担当者の皆さまが共通して抱えているのが「新しいことにチャレンジするとき、どのように社内を巻き込み、推進していけばよいか」という悩み。これは「新しいソリューションを導入する価値があるということを、どのような材料とともに説得できるか」という課題に言い換えることができます。
これに対して梶田氏は「まず確実に効果が出ると思われるところを探し、そこで何%改善すればペイできるかを試算して説得材料にしてみては」と、事前の効果予測の重要性を強調しました。とはいえ予測するというのは難しいことで、これまで数々のWebサイトを分析してきた小川も「そんなものは正直やってみないと分からない」と断言するほど。一方で小川は「一つの施策でCVが2倍3倍になることはなく、現実的なラインというものはある。しかしサイト内改善は翌月にも翌々月にも改善効果が持続するという特徴があり、半年や1年間のスパンで見ればスタート時と比較して2倍という数字が出ることはありうる」とし、相手が納得できるような説得の切り口を工夫して示すという、コミュニケーションのコツを伝授しました。
さらに「新しいチャレンジ=実績のない取り組みにもかかわらず、上司から効果の見込みを求められる」という悩みには「近しい同業他社の情報を集める」「業界専門媒体で似たような事例を探す」というシンプルな回答のほか、小川は「この段階で求められているのは効果予測の精度ではないはず。逆算して『最低限、これくらいの効果が出ないと導入した意味がないよね』というラインで考えた時にROIがペイするならそれでいいのでは」。他にも、業務効率化によるコスト削減側のストーリーを考えるという方法や、成否に注目が集まる一発目の取り組みこそ、豊富なデータと知見をもつ外部パートナーの力を借りるという方法など、様々なアドバイスが飛び出しました。
他にも「リソースの投入はどのタイミングで決めるべきか」「そもそも説得すべきは誰なのか」など様々な質問が挙がり、今回のセミナーでも「デジタルマーケティングに取り組むための組織作り」を課題とする企業の多さが印象的でした。
UNCOVER TRUTHは今後もこのようなセミナーを通して、プロフェッショナルの知見やノウハウを積極的に発信してまいります。