Webサイト改善を実現するための「登る山(ゴール)」と「登り方(KPI)」の決め方

こんにちは、UNCOVER TRUTHでCAOを務めている小川卓です。本記事ではWebサイト改善のためのゴールとKPIの設定方法についてお伝えしていきます。「良いWebサイトを作る」「 Webサイトを良くしていく」 というのはどういう意味でしょうか?こんな問いからこの記事を始めていきます。「良いWebサイトを作る」「Webサイトを良くしていく」ためには、まずは下記を決める必要があります。

  • 何をもって良いとするのか?
  • 何を改善するのか?

登山を例に例えてみましょう。登山をするときに最初に決めるのは「いつ」「どの山を登るのか」ではないでしょうか。Webサイトも一緒です。どの指標をいつまでにどれくらい伸ばすかを決める必要があります。

Webサイトのゴール設定に必要な要素

Webサイトのゴール設定に必要な要素

ゴールが決まっていないWebサイトでは、改善を行うことが困難です。何を改善すればよいのかが定まらず、最適な施策選びや評価を行えなくなります。上図の通り、ゴールには下記3つの要素があります。

  • 期間
  • 指標

例えば、上に具体的なゴールを当てはめると・・・

  • 期間:2024年全体の
  • 指標:売上目標は
  • 値:5,000万円

のようになります。仮に、オンラインだけでは売り上げが発生しないWebサイトであれば・・・

  • 期間:上期の
  • 指標:累計お問い合わせ件数を
  • 値:250件から300件に増やす

のようになるでしょう。ゴールを決めることが(あるいは決めてもらうことが)Webサイトの改善を実現するための第一歩です。

ゴールが決まったら次に考えるのは、どうやってそれを達成するかという「戦略」 です。筆者はこの「戦略」のことを 「KPI」 と提言しています。つまり 「KPI」は数値ではなく、方針なのです。

そもそもKPIって何?

重要業績評価指標(Key Performance Indicator)の詳細な話は、この記事では省きます。理解していただきたいのは 「登る山=ゴール」とするのであれば「登り方=KPI」である という事です。

また登山の例に戻ります。登る山が決まりました。この山を登るにはいくつかの方法があります。富士山であれば「吉田ルート」「須走ルート」「富士宮ルート」といった様々な方法があるわけです。Webサイトでゴールを達成する方法も様々です。複数ある選択肢の中から最適な方針を決め、その方針に則って改善するのがKPIの本質的な考え方 です。例えば・・・

  • 売上達成するために集客を強化したい→どの集客手段を利用するのか?
  • Webサイト内の改善で購入率を上げたい→サイトのどの部分を改善するのか?
  • 購入単価を伸ばしたい→どのような商品ラインナップやキャンペーンを行うのか?

といった具合です。色々な選択肢が考えられる中、皆さんは、方針を決めてKPIを定めなければいけません。

もちろん、すべての施策が実行出来れば理想です。しかし人・物・金・技術などには必ず制限があります。どんなに素晴らしいプランでも実行出来なければ意味が無く、そのためにも取捨選択のプロセスが必要なのです。

KPI(=戦略)はどのように決めていけばよいのか?

KPIを決める方法は多種多様です。ここでは 「分解法」 という一番幅広い方法を紹介いたします。分解法とは名前の通り、ゴールをいくつかの要素に分けてKPIを決めていくという方法です。

例えば、オンラインで商品を販売しているサイトであれば以下のような方程式が成り立ちます。

売上を起点にKPIを決めるための考え方

これが、オンラインでのお問い合わせがあり、その後に商談を通じて成約に繋がるサイトであれば下記のようにも考えられます。

受注件数を起点にKPIを決めるための考え方

では、これら「訪問」「購入率」「問い合わせ率」などがKPIなのか?というとそうではありません。「訪問」をKPIにしてしまうと、そこから取り得る施策の幅が広過ぎるという課題がでてきます。つまり 「業績評価指標(Performance Indicator)」ではあるのですが「重要(Key)」というところまで絞り込めていない状態となっています。

そこで因数分解を行った後に必要なのが、これらを増やすための施策の洗い出しです。訪問を増やすためにはどういった集客手法が考えられるのか、問合せ率を上げるためにはサイト内のどの部分を改善できるのか?といった具合です。

改善施策の優先順位の考え方

上記が施策を洗い出してみた例です。色々な方法で各要素を改善することが可能です。そしてこの中から、どの施策を重要視するかを決めるのです。

繰り返しになりますがすべての施策が実行できるのであれば全てをKPIとして設定し、部署や担当ごとのその数値を追いかけて改善しても良いでしょう。しかし、実際には優先順位を決めないといけない事がほとんどです。では、この優先順位はどう決めればよいのか?についてお話していきます。

優先順位の決め方とは?

シンプルにまとめると 「実行出来る可能性が高い施策を選ぶ」 という事です。この実行出来るには具体的には2つの意味があります。 「施策が思いつく」 そして 「実行の見込みがある」 という事です。

該当箇所を伸ばそうとしてもそもそもアイデアが無ければ始まりませんし、どんなに素晴らしい案を思いついてもそれが実行出来なければ、絵に描いた餅で実際の数値は改善しません。つまりKPI(=戦略)を決める際にはその先の施策(=戦術)もあわせて検討しておく必要があるということです。

KPIを決め、施策もあわせて考える

よく見るケースとしてKPIを決めた後に具体的に出来ることを考えるため、最初の数ヶ月は何も実行されないというものです。

  • よしリスティング広告やるぞ!
  • ⇒予算を取らないと
  • ⇒どこにお願いするか決めないと
  • ⇒見積もり出してもらわないと
  • ⇒広告管理画面の設定をしてもらってようやく配信

ここまで3か月かかるとすれば、その間リスティングからの流入は0件ですよね。

こういった状態に陥らないためにも、複数のKPIを設定したり、KPIの検討を早めに行い期間になったらすぐに始められたり、といった状態を作る必要があります。 私が在籍していた会社では、大体3ヵ月くらい前にはKPIの候補を洗い出し終えていました。そこから残りの数か月で人員の調整や予算の確保に回るというわけです。

しっかり優先順位を決めることでスケジュール調整や予算確保、説明も行いやすくなります。何よりやるべきことが明確になるので、実行出来る可能性そして成功確率も上がります。

業種別のKPI例

KPIの例を聞かれることがよくあります。しかし、同じ業種でも、そのWebサイトの状況や、どのような施策が実際に実行出来るのか等の環境によって、KPIとするべきものは変わっていきます。 また同じサイトだとしても内部や外部の環境によってKPI自体は定期的に見直しされ変わっていくものです。

そこで、ここでは、一般的にはどういったKPIを設定することが多いのか、という一例を紹介させていただきます。ただし、ここに書いてあるものをそのまま利用すればよいというわけではなく、あくまでも参考にした上で、ご自分のサイトの状況にあったKPIを設定するようにしましょう。

ECサイトのKPI例

  • 自然検索経由の流入を10%増やす
  • 商品閲覧率を訪問全体の40%から60%に増やす
  • カート(決済プロセス)への遷移率を10pt増やす
  • 決済開始から完了の遷移率を10pt増やす
  • メルマガ経由の購入を1.5倍にする
  • 購入1回あたりの平均購入点数を1.3点から1.5点に増やす
  • 年間の購入回数を2.5回から3.5回に増やす
  • 年間の購入金額を20,000円から32,000円に増やす

問合せ等を獲得するBtoBサイトのKPI例

  • 訪問ユニーク企業数を300社から450社に増やす
  • サービスや商品閲覧社数比率を50%から68%に増やす
  • ホワイトペーパーダウンロード数を月80件から120件に増やす
  • 新規のアタックリストを毎月30件から60件に増やす
  • セミナーでの総参加人数を800人から1,100人に増やす
  • コンタクト後の成約率を22%から40%に増やす

企業情報などを紹介しているコーポレートサイトのKPI例

  • Topページからの直帰率を60%から35%まで下げる
  • リリースページへの訪問者数を3万から5万に増やす
  • 採用エントリーを月平均3件から5件に改善する
  • 目標達成率(特定ページ群閲覧率)を25%から40%にする

ブログやニュースなどのメディアサイトのKPI例

  • 新規ユーザーの訪問者数を月間120万から220万に増やす
  • 3ヶ月以上連続閲覧ユーザーの割合を12%から20%に増やす
  • サイト名(ブランド名)での検索回数や流入回数を1.5倍に増やす
  • 月あたりの訪問回数が5回以上の人を20%から30%に増やす
  • 1訪問あたりの滞在時間を1.5倍に増やす
  • 1訪問あたりの平均閲覧ページ数を2.3から3.2に増やす
  • 1人あたりの広告のインプレッションを12.0から14.5に増やす
  • 広告のクリック率を0.94%から1.25%に増やす

最後に

もしかすると、ここまでお読みいただいて、KPIを決めるのは大変・・・。と思われた方もいるかもしれません。確かに、簡単に決められるものではありませんし、一人で決められるものでもありません。施策が実行出来ないKPIには意味が無いですし、関係者を巻き込んで皆が納得する必要があります。

しかし、一回決めることが出来れば、その後の施策の実行や評価は圧倒的に楽になります。 都度都度、「これは何のためにやっているんだっけ?」と考える必要がありませんし、施策の考え方や評価方法もシンプルになります。

自社でKPIがまだ設定出来ていない方は、ぜひ一度KPI設計を行うことにチャレンジしてみてください。きっと皆さんの業務がより評価され、取り組むべきことも明確になるでしょう。

また、KPIが設計できた方は、KPIを高めるためのアクションを行いながら、KPIが増加しているか日々追っていきましょう。KPIを高めるためのアクションがなかなか思いつきづらいという方には、当社が提供するWebサイトをコンテンツ単位で分析するツール『Content Analytics(コンテンツアナリティクス)』をおすすめします。

KPI設計で明確にした「取り組むべき対象のページ」において、コンテンツアナリティクスを使うことで、ページ内の課題や改善要素をより見つけやすくなります。コンテンツアナリティクスを活用した分析や改善手法については下記の記事で解説しています。ぜひこちらからご覧ください。

別記事:コンテンツアナリティクスを使った分析手法とWebサイト改善方法

コンテンツアナリティクス

コンテンツアナリティクスの活用方法がわかる資料配布中

GoogleアナリティクスのバージョンがUA(ユニバーサルアナリティクス)からGA4に移行された現在、画面操作や分析方法が難しくWEBサイト改善やコンバージョン改善に苦戦している企業が増えています。当社CAOの小川卓が「コンテンツアナリティクスを使って自社サイトを分析しました」と題してWebサイト改善で見ていくポイントと活用事例のホワイトペーパーを作成いたしました。ぜひご活用ください。

小川卓がコンテンツアナリティクスを使って分析しました

この記事を書いた人

小川卓

小川卓(おがわたく)

株式会社UNCOVER TRUTH
CAO (Chief Analytics Officer)

ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。


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